パンダのターン

怒らせたかも知れない。

そんな恐怖に駆られながらも、距離を離そうとすることを決してするつもりはない。

このジャイアントパンダが攻撃してこない限りは、こちらが離れる必要なんて無いのだ。


しかし、明らかに先程までのジャイアントパンダと目の色が違う。

怒りを覚えた表情であることは確かだった。


「でも、そんなこと言ってたらいつまで経っても倒せない!」


そうだ。

結局、最終的にはすんなりと死んでくれる生き物なんて居ないのだから。

どんな家畜も、最後は死から逃れようと、抗おうとする。


だから、このパンダが攻撃してこないほうがむしろ不自然と捉えるべきだ。

なら━━


「そっちがその気じゃないなら……今のうちに殺しちゃうよ!?」


アサミは、まだ温まりきっていないヒート・アサシン・ナイフで、ジャイアントパンダの頭を切りつけた。

当たったのはちょうど鼻のあたりだろうか。

しかし、聞こえてきた音は、


”ガキィイン”


まるで生物から鳴っているとは思えない、金属音のような音。

これは、熱圧縮装置が温まりきっても、肉を切断するのはなかなか難しい相談だ。


「━━ッ!なにこれ!?」


現状、アサミも驚くしか無かった。

為すすべの無さに、心が折れそうだった。


そして、アサミの折れそうな心を折りに来るかのような、ジャイアントパンダの声が、また宇宙内で反響し、小惑星帯の中で共鳴する。


『グオオォォォ!!』


今度は、さっきとはまるで違う。

今度のジャイアントパンダは、正真正銘━━

りに来てる眼だ。


先程の共鳴した叫び声の直後、スノウラビットに向けて腕を左右交互に振り回した。

宇宙空間にも関わらず、一歩一歩地面を踏みしめているかのように腕を振り回す。


ジャイアントパンダの腕の振り回し。

この攻撃は、ジャイアントパンダの基本的な攻撃と言っても過言ではない。

何故か?

この攻撃が一番効率が良いからである。

単純な攻撃速度。そして何倍にも増したその腕の大きさ、太さを全身フル活用した攻撃方法は、一番威力の出る攻撃だろう。

この攻撃による人類の被害総額、およそ32万ドル!

日本円にして約3200万円!


この攻撃には、アサミも回避行動が少し遅れる。


「う、うわぁッ!?」


もう無理だ、そうアサミが諦めかけた時だった。


”パァァンッ”


何かが弾ける音と共に、ジャイアントパンダが頭から後ろに吹っ飛んでいった。

アサミが後ろを振り返ると、そこには離れた場所から狙撃銃スナイパーライフルを構えるクワイエットビーの姿が。

狙撃銃スナイパーライフルの銃口からは、小さく白い煙が出ていた。

間違いない。

ラァラの狙撃による攻撃だ。


「うっひょー、ラァラちゃん、強っよー……」


クワイエットビーの主装備となるのは狙撃銃スナイパーライフル

名を、『パールスペック:ドラゴン』。

<ガネーシャ>に存在するパール社製の、初の銃型武器。その記念として、強さの象徴である『ドラゴン』の名を冠している。

ボルトアクション式で、一発一発が全て高威力。

しかし、マガジン構造にすることで、ASCOFアスコフではほぼ不可能なボルトアクション後の充填作業無しで扱うことが可能であり、反動を制御できる機体であればセミオートの真似事も可能。


しかし、どれだけ欠点を減らそうがあくまでもボルトアクションスナイパーライフル。

扱いは難しい。

だがしかし!


ラァラの技術力ならば、何も問題はない。

そう、問題なく運用することができるのだ。

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