第2話 処女作は撃沈

 小説を書き続けるにあたって、なんと言いますか、首の皮一枚で残ったと言いますか。やる気を抽出してもらった、あるいは喝を入れてもらったとでも表現しましょうか。とにかく奮起するきっかけをもらいました。


 小説の新人賞に応募したのです。世に広くお伝えしたかった処女作は、力及ばず落選しました。残念ではありましたが、そこで3度目となるプロの編集者さんからの感想を頂戴しまして。

 どうだったのでしょう、最後まで読んでもらえました? 面白かったですか? 落涙は?

 ほんの数行の講評からは読み取ることができませんでしたが、そこにはお褒めの言葉がありました。


 リズムがとてもすばらしい、ですか?

 読んでいて気持ちよい、ですか?


「そんなことを言われたのはあああっ……!」


 実は初めてではありません。これまでにも読者さんから幾度か。でもそれは追従と言いますか、お世辞であろうなあと思っていました。社交辞令だとばかり。感想をお寄せくださった方々、その節は陰で失礼をいたしました。


 私は私の文を何もわかっていなかったのですね。

 文章が下手でしょう? → 悪くない

 物語が良いでしょう? → イマイチ


 まるで噛み合っていませんがこれが現状です。現実と言った方がよいでしょうか。

 それはまぶしいばかりの現実、しかし講評には続きがありました。そこにはしっかりとしたお叱りの言葉が。苛立ちも見てとれた気がしました。

 ほめちぎられて終わっていればその作品は受賞です。当然続きがあり、そこにはありありと苦言が呈されていました。褒め言葉よりも長い苦言が。


 作品の面白さを伝えるのにどれだけ読ませるのかと、こんなにも文量が必要だったのか、と。痛烈なご指摘でした。忍耐の70万字マラソンを強いてすみませんでした。


 思い当たる節があります。それは拙作にではなく、天下の海賊マンガにです。(←この期に及んでまだ拙作の弱点が見えていないのです!)

 もう一度最初から通して読む気になるかですよ。100巻超もの大長編を。

 もちろんファンならふたつ返事でしょうが、そうでない身であれば躊躇はしてもおかしくないでしょう?

 そうなると二度目は遠慮、一度読めば十分。読み始めても途中で断念なんてことも。

 たぶん私の作品も同じなのです。その上で面白さときたら雲泥なのですから。泥。


 反省です。

 やはり長すぎたのは間違いないのです。ただ単純に、後先考えず、増やせられるだけ増やしました。長ければ長いほど喜ばれる、この錯覚した考えが根底にあって。

 ただ気持ちよく書きました。描ききりました。それを見事に、ものを見ただけでズバッと言い当てられてしまったのです。恥ずかしい書き手なのですおれごん未来とは。反省!


 でも。


 でもですよ。

 問わずにはいられないのです。

 スリラーバークにも魚人島にも、ロングリングロングランドにも行かない旅が本当に大冒険なのかと。屠殺も老衰も飢饉も、疫病もない拙作に果たして存在する価値はあるのかと。

 ではそれらは百歩譲ってもらって残すとして。

 問いましょう。旅の途中で悲劇的な別れをした相棒と、わずか数話で再会したとあっては拍子抜けしませんか?

 見えます、天下の海賊マンガの作者さんが涙ながらにうなずいているのが。

 あの長さは必要だった、そう信じて疑わない2019年の私が、すぐそこで私を睨んでいます。

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