【完結済】わたくしの友人は転生人ですの。彼女の推しはわたくしのようですわ【貴方たちはお呼びではありませんわ……悪役令嬢?視点】

宇水涼麻

第1話

「はぁ。尊いわぁ」


 彼女の呟きにわたくしは読んでる本から目を離し頭を上げました。いったい何が尊いというのでしょうか。


 ……………彼女の視線は…………わたくしに向いておりました。


 なぜでございましょう?



〰️ 〰️ 〰️



 ここバスチザード王国には貴族学園がございます。十五歳から十八歳の貴族子女が通う全寮制の学園ですの。


 わたくしも今年入学いたしました。昨日は入学の式典がございまして、本日から教室にて授業が始まります。


 わたくしは寮の部屋でメイドに支度をしていただきました。わたくしの銀髪は真っ直ぐすぎてアレンジは難しいかと思われますのに、幼い頃からわたくし付きをしてくれるメイドのソフェリは両サイドの髪を四つ編みにして真中に髪飾りをしてくれました。


「いかがですか?」


 ソフェリに手渡された手鏡で後姿を確認するとわたくしの瞳と同じ緑がかった青色の石のお花とサマーブルー色の石のお花が寄り添うように装飾されている可愛らしい髪飾が映ります。


「ダンティル様にいただいた髪飾ね」


「はい。ご入学に合わせて学園でも派手にならずそれでいて美しく気品溢れる髪飾をプレゼントしてくださるなんて、さすが婚約者様ですよね」


 ソフェリはうっとりと見つめます。ソフェリに褒められたことが気恥ずかしくそれよりも嬉しく、そっと髪飾に触れました。


 わたくしの婚約者ダンティル・バスチザード第一王子殿下は短めの金髪、鼻筋が通りサマーブルー色の目は大きく、優しく微笑むと誰もが虜になるというほどの美男子でございますの。


 婚約者であるわたくしに大変お心を砕いてくださり、何かと贈り物をしてくださいます。


「このデザイン。まるでお嬢様と王子殿下が寄り添っておられるようですわ」


 わたくしは思わず頬を染めてしまいます。

 

 わたくしはベティリーネ・メルケルス。メルケルス公爵家の一人娘です。母は幼い頃に儚くなりましたが、父や使用人たちに大切に育てていただきました。


 一人娘のわたくしでございますが、王家からの強いご希望で第一王子たるダンティル様の婚約者となりました。

 わたくしたちのお子が王家とメルケルス公爵家を後継するらしいのですが、あまりに気の早いお話で恥ずかしくなってしまいますわ。


「では、いってくるわね」


 わたくしは鞄を持ち寮を出ます。


 もうすぐ学園の玄関という時でございました。


「きゃあ!!!!」


 馬の嘶く声とともに女性の悲鳴が聞こえます。わたくしは急いでそちらに参りました。


 そこには白馬に跨ったダンティル様とその足元で震える女子生徒がおりました。 


 その女子生徒は、白磁の肌に大きな瞳は青藍色でマリーゴールド色の髪は緩くウェーブがかかりふわふわした方です。


「アンナリセル・コヨベール辺境伯令嬢様」


 わたくしは自己確認するように呟いておりました。アンナリセル様はクラスメートのお一人でございます。


 馬から降りたダンティル様は馬の口を従者に預けアンナリセル様を助け起こします。


 その仕草があまりにも優雅で、見つめ合うお二人があまりにも優美で神々しく、わたくしは近寄ることもできぬほど固まってしまいました。

 お二人の絵画のようなご様子に誰も声さえもかけられないようです。隣にいらっしゃる従者さえも。


 どれくらいの時間が過ぎたのかはわかりません。


「ベティ!」


 ダンティル様のお声にわたくしははっと我に返りました。


「は、はい。ここに」


 わたくしはお二人の元へ参りました。

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