報酬の確認と街巡り

 翌日、予告通り公国側から報酬が『スカーレット』のギルドハウスに届いた。

 アルマとケリン、そしての荷物持ちのレナが、それぞれの報酬のチェックをしている。


「これが新しいミスリルの盾か。 アイシアにやらないとな」


「あ、ミスリルの剣もあるよ。 これ、ケリン君が使ったらいいよ」


「いいのか?」


「あの時にも言ったけど、今までの剣が刃こぼれしていたしね。 丁度よかったんじゃないかな?」


「そういえば、エリクシアの奴らに襲撃される前にそう言われてたな……」

 

「ああ、あったね。 そんな事件が……」


 アルマとケリンは、かつてエリクシアの戦士たちに襲撃された事を思い出しながら、ケリンはアルマから剣を受け取った。

 一方のレナは、報酬のお金のチェックをしていた。


「お金の方も500万ゴールドはあるよ。 国の財政は大丈夫なのかなぁ……」


「まぁ、陛下や大公曰く、エリクシアにある隠し金庫から賠償金扱いとして徴収したって話だし、ボク達が貰うのってそこから出した奴じゃないかな?」


「それ、泥棒じゃ……?」


「エリクシアが廃墟と化したから、そうするしかなかったようだよ。 なお、地下の隠し部屋に金庫が多数置かれていたみたい。 あと、他国との協議をした結果だからね」


「まぁ、殆どの国民が死んじゃったからね。 向こうの王族含めて」


 貰ったお金の方も、実はリーベル公国側によるエリクシア跡地の立ち入り調査で、王城があったとされる場所の地下に隠し部屋があり、そこに金庫が多く設置されていたという事で、他国との緊急協議の結果、リーベル公国が受け持つこととなったようだ。

 やはり、リーベル公国領内でスライムを倒したという事が大きかったのだろう。 でなけれは、批判必至なのだから。


「後は……、食料とか衣類とか…日用品もあるね。 ここが孤児院も運営していると知っているからかもね」


「子供たちが多いからな。 特にかつて俺がいたエリクシアの孤児院から来た子たちも一緒だから……」


「そうだね。 でも、赤ちゃんもキチンと世話してくれているから助かってるよ」


「教育に関しては、エリューシアがメインでやってるんだったか?」


「うん。 彼女とリキュアとエクレアがやってくれてるよ」


「そうか……」


 大多数の子供を受け持つ孤児院も一緒に運営しているのをレーツェルなどが知っているため、食料や衣類、日用品も多くあった。

 これで数か月は運営できる形となっている。


「さて、報酬のチェックも終わったし、ケリン君、出かけるよ」


「そういや、そういう約束だったなぁ。 なら、行こうか」


「じゃあ、レナ、行ってくるね」


「はーい、いってらっしゃーい」


 レナに見送られる形で、アルマはケリンの腕を組んで、テンション高めに出発した。

 ここから、アルマとケリンの街巡りが始まるのであった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「意外と賑わってるな。 一昨日スライムが襲来したってのに」


「まぁ、スライム襲来の時は避難してたみたいだね。 でもスライムがいなくなったのを知って賑わいを取り戻したのはいい事だよ」


「確かにな」


 アルマとケリンは、アルストの町の商店街を歩いていた。

 一昨日のスライムによる恐怖から解放された商店街は、瞬く間に賑わいを取り戻していた。

 被害が無かったことが大きかったのだろう。

 すぐに再開できた店が多かった。


「おばちゃん、こんにちはー」


「あらー、アルマちゃんこんにちは。 そこの男の子は彼氏かしら?」


「まぁ、そんなところだよ。 ケリン君っていうの」


「ど、どうも……」


(というか、少しは否定してくれよ……。 恥ずかしすぎるって!)


 店のおばさんが、アルマの彼氏なのかを聞かれたが、アルマ自身が否定しなかった事に、ケリンは恥ずかしさで顔を真っ赤にした。

 そのため、挨拶もぎこちなくなった。


「ケリン君は、うちのギルドに入ってくれた剣士の男の子で子供たちの面倒も見てくれているよ」


「まぁ、えらいわねぇ」


「一応、俺も孤児でしたから」


「あらあら、そうなのねぇ。 そうだ、この出来立てのパンをあげるわ」


「いいの? それ、売り物だよね?」


「いいのよー。 町を救ってくれたお礼なんだから」


「あはは、じゃあお言葉に甘えるね、おばちゃん」


 パン屋のおばさんが、町を救ってくれたお礼という事で、出来立てのパンをアルマに差し出した。

 アルマも一瞬ためらったが、お言葉に甘えるように素直に受け取った。


「それじゃ、おばちゃんも頑張ってね」


「ええ、アルマちゃんもケリン君も頑張ってねー」


 アルマとケリンは、パン屋のおばさんと別れを告げて、街巡りの続きとしゃれこんだ。

 ケリンはアルマに腕を組まれるがままに、彼女と歩調を合わせて一緒に歩いた。

 とはいえ、満更ではなかった事は言うまでもないだろう。


「さぁ、次はあそこに行くよ!」


「あそこは……食堂か?」


「お休みの時によく利用する食堂なんだよ。 あそこでボクのおすすめのメニューがあるからそれを食べてみてよ」


「アルマのおすすめのメニューか。 楽しみだな」


 二人の次の目的地は、大きめの食堂。

 アルマが一休みする時などによく利用している店なのだそうだ。

 アルマのおすすめのメニューが何なのか、楽しみにしながらケリンはアルマと食堂へ向かった。


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