第23話 若返りに効く薬毒5
「薬師様、おらにお情けをくださいなぁ」
顔を真っ赤にして足取りも怪しい女がふらふらと近寄って来て、
「なんぼ若返っても、みんな顔見知りじゃつまらん。おらは薬師様みたいな綺麗な男が好きじゃあ」
と言った。
ハヤテは鬱陶しそうに、手を振って近寄るな、と意思表示をしたが酒と薬毒で酔っ払っている女には通じなかった。
だらしなく浴衣の前がはだけ、女はハヤテの横にどすんと座った。
太ももも陰部もあらわになるようにハヤテの方へ足を開いて見せた。
若返りの薬毒で十数年を戻っても女は魅力的とは言い難かった。
張りのある肌、ぷるんぷるんと揺れる乳房、全身から生きる若い雌のパワーが溢れだしているが、男根をねだるその様は醜く浅ましかった。
「いいではねえかぁ、薬師様ぁ、頼むでぇ。そんなガキを抱っこしててもそそらねえべ。おらの方がなんぼかええ身体してるべぇ」
と女はハナの腕を引っ張ろうと手を出した。
「痛っ」
腕をぎゅうっとつかまれ、ハナは顔をしかめた。
細い細い枯れ木のようなハナの腕は、山間で暮らし土や獣を相手にしている強力の女ならぽきりと折れそうだった。
「触るな」
とハヤテが言い、女の腕を荒々しく掴んで突き飛ばした。
太った女の身体はごろんと転がり、女はげらげらげらと笑った。
「ハヤテ、布団で眠りたいよ」
とハナが小声で言った。
大きく息をして力を溜めてから身体に力を入れる。
ハヤテの腕の中から起き上がろうとした時、ハナの顔に生暖かい物がかかった。
どろりとしたそれは鉄のような匂いがした。
顔のかかったその液体は頬を伝い、ハナの唇を伝い口の中へと侵入する。
甘い、甘い液体がハナの舌と喉を湿らし、そのを欲する強烈な欲望がハナの中にわき起こった。
広間の破廉恥なパーティは続いている。
あえぎ声と怒号とすすり泣く声が交差し、誰も何も見ていない。
快楽を追い求める人間の貪欲で汚らしい裸だけが畳のあちこちで重なり合って団子になっている。
ハナは上を見上げた。
ぽたぽたと落ちてくるのは千切れた人間の腕から落ちてくる血液だった。
ハヤテが人間の女の腕を掴んで、ハナの顔の上にかざしていた。
千切れた腕から甘い血がぽたぽたとハナの顔に落ちてくる。
ハナは振り返って、ごろんと転がった女を見た。
片腕がないのにも関わらず、畳を血で汚し、肉体を血と体液で汚しながらも別の男の方へ這いずりながら寄って行こうとしていた。
痛そうな顔もしておらず、腕を千切られた事にも気がついていないようだ。
ハヤテはさらに女のもう片方の腕と両足をちぎり取った。
どろっとした血が流れ出て、千切られた肉片が周囲に飛び散った。
「ぐううううう」
と女は呻いたがそれでもまだ四肢のない身体で男根を求め、ずりずりと畳を這っていこうとする。
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