【飛び梅】 3月30日より。

【飛び梅】


 とても優しい城主の庭に、1本の立派な梅の木が生えていました。

 それは異国の木で、寒い国でも育つからと譲られた木でした。


 その木は暖かな春には可憐な花を咲かせ、夏には大きな黄色い実を付けます。

 花も実もとても良い匂いで、城主は大切にしていました。


 所がある日、有能な城主は妬まれた事が原因で、汚名を着せられ僻地へ引っ越しを余儀無くされます。

 ですが次の家はとても遠く、急ぎでもあったので梅の木を一緒に連れて行く事が出来ません。


「すまない、どうか元気で居ておくれ」


 城主は泣きながら梅の木に詫びると、遠くへ行ってしまいました。


 それからと言うもの、何年経っても梅の木は咲かずのまま。

 いくら新しい城主が面倒を見ても咲かず、かと言って樹医が見ても、病気では無いと言います。


 そしてとうとう元の城主が亡くなった事を知った梅の木は、小枝を折り、風に吹かれます。

 亡き城主の傍へ。


 そして城主の墓の傍へ植わると、満開の花を咲き誇らせ続けました。


※既存の改変です。

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