第21話 グリンダとの闘い

 「さあ始めましょうか」


 「お願いします」




 険悪な雰囲気の中、グリンダさんとの対決が始まった。


 オリビアさんが余計なこと言うから……




 「じゃあ私からいかせてもらうわね」


グリンダさんは杖を振る。どんな魔法を使うのか……?




――氷魔法――


高速の氷の塊が僕めがけて飛んでくる。




 すごい数だ、避けられない……


 ――氷魔法――


 僕は氷の壁を作り出し、氷の塊から身を守る。




 「あら? ペルーサ君も氷魔法が使えるのね」


 グリンダさんのスキルは氷魔法なのか?




 僕も氷の塊を打ち込む。




 「……すごいわ。私の氷魔法より確かに上かも……でも」


――炎魔法――


 グリンダさんは炎の渦を出し、僕の氷をあっという間に溶かす。


すごいな……炎魔法もこのレベルなのか?




 「さあ! もっとあなたの力を見せてちょうだい!」




 グリンダさんなら僕の全力でも受け止めてくれそうだ。


 僕はいつくかのダンジョンを回り、成長した分を確かめたくなっていた。




 「いきますよ! グリンダさん!」


 「お? 男の顔になったわね」


 ――炎魔法――


 僕は巨大な炎の球を作り出す。




 「え……? 炎魔法も使えるの?」


 「いきます……」


 僕はグリンダさんに炎の球を投げる。


 「くっ! こっちも!」


 グリンダさんも炎の球を作り出し応戦する。




 ぶつかり合う2つの炎の球。勝敗がつくのはあっという間だった。




 僕の球がグリンダさんの炎の球を飲み込み、グリンダさんに向かっていく。




 「危ない!」


 「くっ!!」


 グリンダさんは横に転がり込み、かろうじで僕の球を避ける。




 「はぁはぁ、すごいのね。ペルーサ君……オリビアの言ってたこともホントだわ」


 立ち上がるグリンダさん。


 「でも、だからと言って負けるわけにはいかないわ!」


 グリンダさんの表情が変わる。本気だ。






 グリンダさんは杖を掲げる


――召還魔法――




 「召還魔法?」


 「グリンダ……本気だ」


 訓練場の隅にいるオリビアさんが呟く。




 グリンダさんの周りに次々と鬼が現れた。


 「ペルーサ君、これが私のスキル、召還魔法よ」


召還魔法……初めて見る。


「行きなさい!」


 グリンダさんの命令に従い僕に襲い掛かってくる鬼たち。




 「くっ!」


 僕は炎の球で鬼を撃退していく。


 炎の球に当たると鬼は消滅していく。1体1体はそれほど強くないようだが、次々と召還されていく。これは厄介だ。


 僕は必死で鬼を撃退するが周りを囲まれる。




 「甘いわね。ペルーサ君」


 グリンダさんが魔法を唱える。


 ―-氷魔法――氷の床




 (氷の床? いったいどんな魔法だ?)


 後ろに下がろうとしたその時。


 「うわぁぁ」


 僕は転倒した。床がツルツルだ。これが氷の床の効果のようだ。


 鬼が僕にのしかかり身動きがとれない。




 「捕まえたわ」


 倒れる僕の上にグリンダさん。




 「痛いけどごめんね。あとでたくさん優しくしてあげるわ」


 ―-岩魔法――


 僕の頭上に巨大な岩が落ちてくる。


 (いやいや! 痛いとかのレベルじゃないでしょ……)


 「くっ!!!」


 『ガッシャ――ン!!』


 岩が床にめり込む




 「はぁはぁはぁ」


 グリンダさんが後ろを振り返る。


 「どうして後ろに!? ……瞬間移動!?」


 (この人、戦いになるとなんでもする人なんだな……恐ろしい……)




 「すごい……瞬間移動をあの一瞬で使えるなんて」


 なぜか笑顔のグリンダさん。


 「嬉しいわ。ここまで本気で戦える相手がいるなんて!」


 (模擬試合って言ってませんでしたっけ……?)




 グリンダさんが再び杖を掲げる。


 ――召還魔法――


 また鬼が続々と召還される。


 (あの杖をなんとかしないと召還をとめられないみたいだな……)




 鬼が僕に飛び掛かる。




 ――風魔法――


竜巻を出し、鬼を一蹴する。


「風魔法もこの魔力……?」




 ――肉体強化――


僕は全身の筋肉を強化する。




「強化魔法まで……」




僕は地面を強く蹴りグリンダさんに飛び掛かる。


「は、速い!!」


魔法を繰り出す隙も与えない。一瞬でグリンダさんの目の前に飛ぶ。




「はあっ!!」


僕はグリンダさんの杖を蹴り飛ばす。


 「ああ!」


 杖が部屋の隅へと飛ばされる。




 「……グリンダさん、もう終わりにしましょう」


 「……まだよ! 杖がなくっても負けないわ!」


 「でも……」


 「……私はね…もう2度と簡単には負けられないのよ!」


 真剣な表情のグリンダさん。きっと今でもデーモンからカノン様を守れなかったことを悔やんでいるのだろう。半端な決着では失礼だな。




 「分かりました。僕も本気でいきます」




 ――召還魔法――




 「え? 召還魔法?」


 僕は召還魔法を唱えた。もちろん初めての魔法。どうすればいいんだろうか?


 (召還する魔獣を想像するのかな?)


 「そんな……召還はまで使えるの?」


 呆然とするグリンダさん。




 その時、僕らの目の前に巨大な影が現れた。


 それは僕が初めてのダンジョンで倒したゴーレムだった。




 「嘘……ゴーレムを召還……? A級の魔獣よ……?」




 「いきますよ、グリンダさん……」


 (僕の本気です。グリンダさん、どんなケガでもすぐに治しま――――)


 「降参よ」


 「え?」


 「降参……こんなに簡単にゴーレムを召還されたら悔しさもないわよ……」


 「そうですか……」


 「やっぱりペルーサ君を師匠にした私は間違ってなかったみたいだわ」


 グリンダさんは妙にさっぱりした顔で笑った。




 こうして僕らの対決は終わった。


 ゴーレムは立ちすくむ。……召還獣ってどうやって消すんだ?

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