第2話 宝ゲットもボス襲来

 「……それじゃあ、いってきますね……もしゴーレムがいたら助けに来てくださいね……」




 「もちろんだ。俺たちはパーティじゃないか!」




 白々しい嘘をつくゴンザレス。




 しかし、僕の【鑑定】では確かにゴーレムの反応はなかった。ゴーレムがいないことを祈るしかない。








 『ギィィィィイ』




 重い扉を開く。長い間開いたことのないような鈍い音がした。




 部屋を見渡す。薄暗い不気味な部屋だ。しかし、ゴーレムはやはりいないようだ。




 ホッとしたことをで僕は部屋の奥へ向かう。




 古いぼろぼろの宝箱。この中に【石化の首飾り】があるのだ。






 「おい! 宝はあったのか?」




 外からゴンザレスの声が聞こえる。




 僕は宝箱の重いふたを開ける。




 『ギギギギギ』




 箱は一度も開いたことがないんじゃないのか? と思うほどのホコリが舞った。




 「ゴホゴホ」




 ホコリの煙の奥に光るものが見えた。【石化の首飾り】だ! 




 僕は【石化の首飾り】を掴む。流石、幻のアイテムと言われるだけのことはある。ズッシリと重く、不思議な魔力を感じる。




 「隊長! ありました!」




 外のゴンザレスに声をかける。




 「おお! でかした! 早く出てこい!」




 珍しく僕を褒めるゴンザレス。調子のいいやつだ。




 僕は急いで部屋を出る。こんな不気味な部屋すぐに出たい。




 数週間のこのパーティとの旅がやっと終わる。自分には戦士団などまだ無理だったのだ。


 村に帰り、家の農業を継ごう、そう思った。








 しかし……部屋の出口に差し掛かったその時……








 『ガガガガガガッッ!!!』








 「!!!」




 突然、ダンジョンが轟音とともに揺れだした。




 「な、なんだ!?」


 部屋の外のゴンザレス達も異変に気づく。




 おかしい、ゴーレムはいなかったのにどうして……




 僕はあたりを見まわした。


 すると




 「!!!!あぁあ……」




 なんということだ。


 ダンジョンの壁に無数の目玉が現れた。




 僕は悟った。このダンジョンそのものがゴーレムだったのだ! 




 宝を取られたときに目を覚ます魔獣なのだろう。通りで【鑑定】のスキルで反応がなかったはずだ。宝を取るまでは気配をけしているのだ。


 もっとスキルレベルが高ければ見抜けたのかもしれないが僕のレベルでは見抜くのは不可能だ。




 「キサマガ、シンニュウシャカ」




 目を覚ましたゴーレムに僕が敵うわけがない。僕は全力で部屋を出る。






 ゴンザレス達もゴーレムの存在に気づいたようだ。僕のことなんか気にも留めず逃げている。




 「どうなってんだよ!! ゴーレムはいないんじゃなかったのか!?」




 「ホントにこいつは最後までお荷物だな!!」








 ◇








 ダンジョン全体が揺れている。ゴーレムは怒り狂っている。






 地面はうねり、上からは岩石が降ってくる。






 「はぁはぁ」




 命からがら逃げている僕。もう体力の限界だ。




 『ガッ』




 地面の揺れに足を取られ転ぶ。




 仰向けに倒れた僕。




 その時、頭上に巨大な岩石が降ってきた! 




 「うぁああああ」






 『ガッシャーーーーン』




 巨大な石に潰された僕は【石化の首飾り】とともに魔獣のひしめく崖底へと落ちていく……












 ◇












 どれくらい気を失っていただろう。




 暗闇の崖底で目を覚ました。




 「うああぁぁぁ!!!!」




 それと同時に両足に激痛が走った! 




 真っ暗で何も見えない。だが恐らく岩に両足が潰されている……




 「う……うぅ……」




 息もできないほどの激痛だ。全身、あちこちの骨が折れているのだろう。




 このままこの暗闇で死ぬのだろう……そう思った。




 思えば珍しい2つのスキルも持ち、レベルも低いのに浮かれていたのだ。






 両足に回復魔法をかけるもなんの効果もない。




 ……なぜもっとスキルレベルを上げなかったのか。後悔するが全てが手遅れだ。




 失血と疲労で意識が薄れていく。




 死を覚悟した。走馬灯のように思い出が蘇る。




 優しい両親、村の仲間たち……この時、恋人を思い出さない寂しさも感じつつ恐怖に震えた。








 何かが手に当たった。




 「?」




 それは【石化の首飾り】だった。




 「ふっ、こんなモノのために命を落とすとはな……」




 売れば一生遊んで暮らせるという幻のアイテムもここではなんの役にもたたない。




 せめて死ぬときくらいはゴージャスに逝きたいもんだな……




 ペルーサは首に【石化の首飾り】にかけた。




 ズッシリと重い。




 ふふ、死ぬ瞬間の今の自分が一番金持ちだな。薄れゆく意識の中そんなことを考えていた。








 遠くから音がする。魔獣の足音だ。それもA級ダンジョンの強力な魔獣達だ。




 こんな崖底に久々の極上の餌なのだろう。




 「はは、僕は美味そうか? 残さず喰ってくれよ…………」




 もう足の感覚はない。じきに意識もなくなるだろう。






 巨大な魔獣がペルーサを見下ろす。




 大きく口を開けペルーサに噛り付く。










 ペルーサの意識はここでなくなった。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る