第23話 よかった!ただの変人だった!

「じゃあ、うちの部活の出し物は♡冥土屋敷♡ 〜お還りなさいませ、ご主人様!!〜 (お化け屋敷)と言うことで…」


そう僕が言うと、みんなは真剣な面持ちでうんと頷いた。

いやあ、多数決って、理不尽だよな。


「…。」

なんでみんなこれに投票したん⁉︎


あれは遡ること16分前のことだった。


「で、どうやって決めるの?」

墾田永年私財法は、呆れた顔をして僕を見た。


「まあ、他に意見がなければ多数決っていうのが順当じゃね?」

瀬川は音ゲーをしながらそう言った。

音はめちゃくちゃ漏れてるけどいいのだろうか?


「じゃ、それでいっか。」


他のみんなも異議はないようなのでそのまま紙に書いて投票してもらった。

そこまではよかった。


でもさ、みんな自分の案がいいと思ってるわけじゃん?

だから、一番自分の好きなものに投票しようとすると…。


「…また全部の案に1票ずつ入ってるな。」

永遠に決まらないのさ!もうこの結果も五回目だぞ?


「自分のやつ以外に入れるって、決まり作ればいいじゃん。」

墾田永年私財法も流石に疲れたような顔をする。


「さっきそれでもみんな1票ずつだったけどね…。」

流石のマイハッピーエンジェル小鳥遊たんも苦笑いである。


「じゃ、案を出した人がプレゼンしていくのでいいんじゃね?」

「お、瀬川ナイスアイデア!」

まだ音漏れしてるけどな!


「あ、それは…。」

さっきまで静かだった桜が、あわあわとしている。


「桜、大丈夫!田中君みたいに♡冥土屋敷♡ 〜お還りなさいませ、ご主人様!!〜 (お化け屋敷)とか変な案出さない限り緊張する必要無いって!」


「あ…、う、うん…。」

桜はそう言うと、泣きそうな顔で僕を見てきた。


そうだ、確かにここで桜があの案を出したとバレると…。

もしかして、マズくね?


「そういえば桜はどの案を書いたの?」

ここで小鳥遊がトドメを刺しにいく!


「そ、それは…」

「小鳥遊!僕は♡冥土屋敷♡ 〜お還りなさいませ、ご主人様!!〜 (お化け屋敷)って書いたぜ!」


ここは男として助けるしかない‼︎


「あ、それは知ってるけど…。」

小鳥遊は、目のハイライトが消えた目でこちらを見ている。


…理不尽すぎる。


「あ、た、田中君…‼︎」

桜は、僕の方に駆け寄ってくると大きな声でこう言った。


「私が♡冥土屋敷♡ 〜お還りなさいませ、ご主人様!!〜 (お化け屋敷)って書いたのに、庇ってくれたんだね!

ありがとう!本当に嬉しい!」


もう一度言おう、彼女は《大きな声で》言った。

そう、部室のみんなが聞こえるほどに。


瀬川のゲームの音楽だけが、静かに部室に流れた。


「…あ。」

桜もそれに気がついたようだ。


その時、桜と田中以外の気持ちは一緒になった。


さっきまで、田中の案だと思ってボロクソに言ってしまった。

しかし、それは桜の案だった。

このままだと、桜が傷ついてしまう…!

田中が傷つくのはどうでもいいが、それは避けたい…!と。


「よし、田中。もう一度投票しよ。」

「そうだね、田中君。早く投票しよう。」

「田中、早くしろよ。」


…墾田永年私財法、小鳥遊、瀬川が急にノリノリになったな。


結果はもちろん桜の案の圧勝でした。


桜が一番驚いてました。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る