⑱ 風の吹く夜

(1)

幸せ少しくださいと

薄紅の花びらを

水の流れに浮かべたの


京都 鴨川 通り雨

見送る恋と知りながら

情けを受けた未練宿


涙のように零れてゆく

はらはら桜 散り急ぐ頃


(2)

道連れなんてまた夢と

ため息ひとつ落としては

暮れなずむ空 見つめたの


奥飛騨 安曇野 小ぬか雨

愛するだけじゃ足りなくて

見えない明日を待っていた


小路の陰でひっそりと

鬼灯赤く 色づいた頃


(3)

いけない男ね あなたって

最後の恋と言いながら

違う名前を呼んだのよ


陸奥 下北 細雪

熱燗 無理に飲み干して

悲しい嘘を忘れたの


面影さえも遠くなる

ちぎれるような風が吹く夜


面影さえも遠くなる

ちぎれるような風が吹く夜

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る