⑤ 割れたグラス

(1)

「今度いつまた会えるの?」と心で何度も繰り返し

あなたの背中 見送るわ もうすぐ他人になるふたり


困らせること 知りながら

そっと袖口 つけてみた 薄くれないの紅のあと

たぶん あなたは気づかない


あと少しだけ もう少し

せめて微笑み作るまで

せめて あかりを灯すまで

私の傍にいて欲しい



(2)

「さよならするのが辛いの」と

あなたの胸で泣けたなら 小さな嘘も許せそう

ドアを閉めたら遠い男(ひと)


あなたにとって最後まで可愛い女でいたかった

西陽が沈む部屋のすみ

割れたグラスが光ってる


いいのよ いいの このままで

左手だけが知っている 指輪の痕の悲しみと

重ねた指の切なさを


あと少しだけ もう少し

せめて微笑み作るまで

せめて明かりを灯すまで

私のそばにいて欲しい


私のそばにいて欲しい







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