不満ではないのよ


「味薄くない?」

「濃いよりいいだろ、足せるから」

 少々っていう匙加減がわからないんだ、と醤油を渡す。俺が作るといつもこうだ。

「なら私たちのデートも濃くする余地があるってことかしら」

 まさかの反撃に財布の中身を思い浮かべる。常に割り勘といえど実現不可の詫びに、肉を一枚献上した。




【お題:薄味】

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