30. ドングリ

 秋は収穫の宝庫だ。

 この前はキノコ狩り、今度はドングリ拾いをしようと思う。


「というわけで、ドングリ拾いです」

「「「わーい」」」


 三人娘はもう美味しいものが食べられると思っているようで、喜んだ。


 もうワンパターンもワンパターンだよな。山に行って取って帰って食べる。それで「おいしー」っていうという。


 カエラを連れてまた山を登る。

 今度は中腹ぐらい。

 目標地点はわかっているので、今回は楽だ。


 キノコもどのへんに生えるか分かっていることも多いけど、実際にあるかどうかは運しだいなところがある。

 今日の獲物は絶対にある。


 あんまりワンパターンだからゴブリンでも何でも出ないかなとちょっと物騒なことを思いつつ、先へ進む。


 山をなんとか登った。

 そこはシイの木の仲間の山だった。


「ささ、周りのドングリを拾っておくれ」

「「「はーい」」」


 俺含め全員で返事をした。


「カエラばあの見える範囲で取るんだよ」

「「「はーい」」」


 みんな聞き分けがいい。カエラに一日の長がある。


「あ、ウサギさんにゃ!」


 リズが向こうを指さして言った。

 確かに、白いウサギが一瞬だけ見えた。この辺では珍しいけど、いないこともない。


「う、ウサギさん見たかった、です」

「わわわ、私は見たわ」


 ドロシーは見れて、メアリアは見れなかったらしい。


「く、悔しい、です」

「まあ、なんだ。ドンマイ。また見れるよ。たまにいるし」

「そうなんですか?」

「うん」

「次は絶対に見ます」


 その意気だ。まあ絶対は無理かもしれないけど、頑張って。


 そんなこともありつつ、ドングリを拾って歩く。


 ずっとしゃがんでると、腰にきそうだ。

 腰に一度くると、癖になるので、ヤバいらしい。気をつけなきゃ。

 まあ十歳児の考えるようなことではないな、うん。


 次々とドングリを拾う。



「さあ、こんなもんかね。今日は帰ろうか」

「「「はーい」」」


 結局、この日、二回目のウサギさんタイムはなく、メアリアはしょんぼりして帰っていった。




 気を取り直して、今度は家で調理タイムだ。


「まずは、単純なりドングリです」

「「「わーい」」」


 俺が説明すると、みんなうれしそうに返事をした。


 フライパンにドングリを殻ごと入れて、そして煎っていく。

 普通、オブ、普通。ただ煎るだけ。ただし焦げないように定期的に動かしたりはする。


 香ばしいいい匂いがしてくるので、それをお皿に移して終わり。

 すぐに食べたいところだけど、熱いぞ。


「熱くて食べられないにゃん」

「そうですね」


 それが終わったら、次を作ろうと思う。

 今日のメニューはドングリクッキー。まあいつも薄焼きパンだから似たようなものではあるけど、なんか違うといえば違う気がするから大丈夫。


 ドングリをすり鉢でする。全部皮をいて、クリと違い薄皮も剥ける。その中身だけ取り出して、すり鉢でごりごりやって粉状にするのだ。

 これにはみんなにも手伝ってもらった。

 熱い煎りドングリはお預けだ。


「ごりごりごり~♪」


 ドロシーもご機嫌ですってくれた。

 できた粉を小麦粉と混ぜ、そしてバターの代わりにイノシシの脂身をちょっと入れて、なけなしの蜂蜜を少量投入。蜂蜜があるのと無いのではだいぶ違うと思う。

 こうして丸めて、オーブンなんていいものは無いので、フライパンで焼いていく。


「ドングリ、クッキー♪」


 今度はリズがドングリクッキーの歌を歌っていた。

 それをみんなで聞きながら焼いた。


 冷まして完成。ドングリクッキーと、煎りドングリの完成です。


「美味しいわ」

「おいしー」

「わ、ほんのり甘い! 美味しい、です!」


 メアリアも納得の味になったようだ。クッキーは大好評。煎りドングリもそれなりに美味しい。

 他の子も、満足の様子。


 ドングリは山の動物の食料にもなるので、取り過ぎると困るけど、こういうおまけ的に取ってきて食べる分には大丈夫だろう。

 ドングリ取り過ぎて、クマとかが襲ってきたら大変だ。


 完成したものを、各家に配布して、今回のミッションは終了となった。

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