7. ドキドキおままごと

 ということで引き続き、出来たての空き家の鶏小屋でおままごとをしている。


 下は地面だけど麦ワラのゴザを敷いてある。


「ご飯、美味しー、ごくごく」

「このスープ、すごく美味しいにゃ」


 俺は二人がスープを美味しいといいながら飲むのがなんか、変な感じがしつつ俺も真似をする。


「ああ、美味しいなぁ」

「ちょっと、ブラン、棒読みよくない」

「演技下手にゃ」


 怒られてしまった。

 気を取り直して、そのまま続いた。


「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまですにゃ」


「ごちそうさまでした」


 この世界でも、食前、食後の挨拶に相当するものはある。


「それじゃあ、お待ちかねの、寝る時間です」

「うにゃぁあああ」


 ドロシーが宣言すると、リズがうれしそうに猫みたいに鳴いた。


「さ、並んで寝るわよ」


 俺を二人が左右から挟む形で両手を取られて、もう一枚のワラのゴザみたいな布団の代わりを上からかけられる。

 これで年齢が十六歳ぐらいだったらアレだけど、まだ十歳、わずかな柔らかさがあるだけの、ほぼぺったんこ。

 両方から暖かいぬくもりが俺の両手を掴んで胸に抱いている。

 そして足を絡めてくる。どこでそんな技覚えてきた、おまえらぁ~。


 柔らかいおっぱいは無いが、両手に花、温かさは本物だ。

 そして、右を向いたらエルフのドロシーと目が合った。一丁前に頬を赤くして、しかし余裕たっぷりにウィンクしてきた。肌が白いから顔を赤くすると目立つんだ。

 耐えられなくて左を向いたら、猫耳のリズが目を見開いてじっと見てきた。

 こちらも無理だったので、上を向いて天に祈る。


「チュッ」

「チュッ」


 次の瞬間、両方の頬っぺたに温かくて柔らかい小さな不思議な感触があった。

 キスだった。

 唇が離れると、濡れた頬がわずかに冷たく感じる。


 またぶちゅっっと二人とも対抗してキスしてくる。

 もう俺は精神がいっぱいいっぱいだった。ただの十歳児なら「なんだよお前ら気持ち悪い」とか言って逃げればいいんだけど、俺の精神年齢は二四歳相当なので。

 動けなくて、でもどこか幸せで、いつまでも彼女たちを感じていたい。


「むぅぅう」

「むぅううにゃああ」


 ドロシーとリズが対抗意識をさらに燃やしてしまい、抱き着き攻撃に変更になった。

 全身でくっついてくる。体が温かい。

 まだまだどちらも肉があんまりついてなくて、柔らかさが足りないかもしれない。

 なんというか全体的には骨っぽい。


 もっといっぱい食べて、健康的になってくれ。

 そのためには俺もそれなりに頑張って、お金またはご飯をもっと増やさないと。




 そのまま、二人は興奮していたけど、いつの間にか本当に寝てしまった。

 真ん中で挟まれて、掴まれてる俺は、動くこともできず、そのまましばらく放置された。

 起こしてしまうのも、なんか気まずい。


 そのまま俺もいつの間にか、昼寝になった。

 夢の中では二人とも、いいお姉さんになっていて、俺を取り合ういけない夢だった。

 実にけしからん感じだった。いいぞもっとやれ。

 しかし現実に戻ってくれば、まだ純真じゅんしん無垢むくな彼女たちを見て、少し反省した。



 起きたらまたゲーム、三並べをする。

 五目並べというのもある。マス目がいくつかなんて覚えていない。それに先手必勝だったはずだ。禁じ手ルールを加えた遊びになるのもあるがやはりルールは知らない。

 小さいうちは三並べでも十分だ。


 そういえば、この前ドドンゴが来たとき三並べの対戦をした。あまり強くなかった。手加減してるのか、本気なのかちょっと分からない。



 魔法ごっこをしてみる。

 この村では一人でいる時間はほぼないといっていい。

 ということで、何をするにも自分だけでひっそりおこなう事ができない。

 魔法の実験も、みんなでするしかない。


「魔法を手から出すぞ~」

「「おぉおお~」」


 俺たちは外で並んで手をかざす。


 ボッと音が鳴って、俺の手から小さな火が出ていた。暖かい。


「すごい! ブランばっかりずるい」

「わにゃにゃ」

「へへん」


 俺は得意になって、鼻の下を指でこすって優越感に浸る。


「どうやったらできるかな? 教えなさいよ」


 ちょっとドロシーちゃんの気迫がすごい。


「えっとね、まず魔力を手の先に集めるんだよ」


 俺がそういい、ドロシーと手をつないで手の先からドロシーに魔力を流してみる。


「あ、なんか魔力が流れてくるのが分かる気がするわ」

「そうそう、それだよ。自分でも流して見て」

「うんっ、これならできそう」


 ドロシーは手を放して、再び手をかざす。今度はちっちゃな火の玉が一瞬だけ燃えていた。


「わわわ」

「にゃっ」

「おー。ドロシーもできるじゃん」


 ドロシーは何回も火の玉を出しては、練習していた。

 そしてリズはこの日、結局火は出すことができなかった。


 これからも魔法の鍛錬も遊び半分で、日常生活に追加しよう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る