4. 三並べ

 おばばは家で作業をしている日もあるので、そういう日は暇だ。

 薬草やポーションの知識をつけに、弟子みたいに手伝ってもいいが、俺たちはまだ十歳ということになっている。

 俺も頭の中に二四歳の前世の記憶があるけど、今は十歳。遊びたい。


 ということで、暇な今日は、村で遊ぶ。


 いつもは遊びといっても、その辺を走り回っているだけだったりする。

 でも頭が良くなった俺はそれだけだと、満足できない心になってしまった。


 だから、三並べをまず普及させたい。


「○と×を交互に書いていくんだ」

「なるほど」

「なるほど、にゃん」


 俺が外で木の枝で地面に書いて、試しにやってみる。

 日本では○と×で書くので、マルバツゲームと呼ぶ人もいる。


「○」

「×」

「○」

「×」

「○」

「×」

「○、はい俺の勝ち」

「うぎゅう」


 リズが悔しがる。

 ○○○

 ×○_

 _××

 今はこういう形で俺の勝ちだった。

 こういうとき、三人いると一人休みでちょっとバランスが悪い。


「俺は見てるよ、リズとドロシーでやって」

「「はーい」」


 俺は指導する側に回るか。

 そして先手必勝ではなく、これは最善手をすれば、アイコになる。

 だから、やり続けていると二人とも強くなってきて、アイコばかりになってくる。

 まぁまだ最初なので、けっこうミスもあって、勝負がつくことも何回かある。


 地面に書くと、場所を取る。

 そして消したりと面倒くさい。

 そこで、白っぽい石と、黒っぽい石を五個ずつ用意して、石を置いていくタイプを考えた。

 見た感じはミニ囲碁みたいな風のやつ。


 石なら家の中でもできるから、外でやる必要がない。

 マス目は麦ワラの紐をちょんと置くだけでいい。



 二人の三並べはそれなりに白熱したけど、そのうちに飽きてしまった。

 また今度、やろう。




 次は何しようかな。

 ということで、始めた。


「じゃじゃーん。棒倒し」

「おお、何それ?」

「なんですにゃん?」


 俺は決め顔で、棒倒しを説明する。

 女の子に堂々と説明している俺はなんか偉くなったみたいで、ちょっと優越感がある。

 なんてことはない、砂で棒を立てて、周りの砂を取っていく遊びだ。



 ばーと俺が砂を豪快に取って手本を見せた。

 次はリズ。砂をびくびくしながら取っていった。すでに倒れそうだ。

 次はドロシー。顔はちょっと泣きそう。可哀想なドロシーだけど綺麗な顔だから、泣き顔もキマっている。


「ああっ、うぅぅ」

「はい、ドロシーの負け」


 ドロシーが結局、砂を取ったら倒れてしまった。


「いいもん。次は勝つもん」


 ドロシーはやる気だ。いつまでもイジイジしていないさっぱりした性格なのはいいところだ。


「にゃん、負けないにゃ」


 リズはリズで、こちらも頑張るもよう。リズちゃんは単純なのでちょっと発破を掛ければ、すぐ盛り上がったりする。


 それから何回か棒倒しもやった。


 このゲームには欠点がある。それは少ししか砂を取らないと、取ってるんだか取ってないんだか分からないぐらいになるということだ。

 ビビりまくって、ちょっとしか取らないと、ちょっと不公平感がある。

 あと単純に手が汚れる。

 これは家の裏を小川が流れているからすぐ洗えるとはいえ、面倒くさいといえばそうだ。


 とにかく、俺たちはこうして「文明的な遊び」をして過ごすことが多くなった。




 これだけだとなんなので、他の遊びも。


 いわゆる「オオバコ相撲」という遊びもたまにやる。

 長時間やるわけではないが、その瞬間はなかなか楽しい。


 これはオオバコという茎がある草を千切ってきて、その茎を二つ折りにして二人でクロスさせて、自分の草の両端を持つ。

 それをお互いが引っ張って、先に千切れたほうが負けという遊びだ。

 大きくて太いのを選ぶとたぶん強いが、そこまでやったことがないので、自信はない。

 意外とその辺に生えている草なので、地球にいる人でも子供と遊んでみるのもいいと思う。

 ただ最近はその辺に草があんまり生えていないという地域も多いので、難しいかもしれない。

 昔はその辺は畑や空き地なんかもそこそこあり、草なんかは取っても怒られないような場所があったけど、今ではほとんど宅地と化しているだろう。

 見渡す限り家は三軒とか、異世界最高だなぁ。



 三並べは、うちの両親なんかも加わって、夜ちょっとやったりするようになった。

 家族と遊ぶっていうのも、それなりに楽しい。

 いやぁ一家団欒だんらんっていうのか、なんか涙が出そうだ。


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