21 串焼き
二人が去って、僕ひとりで自分の部屋に残される。
僕も気を取り直して、ログインしますか。
ベッドに横になる。なんか生暖かい。
さっきまで彼女と妹が寝ていたと思うと、ちょっとドキドキする。
「あーもう、リンクアップ」
翡竜オンラインを起動、一応のタイトル画面になる。
下に『東京サーバー(ja:日本語)[正常]』になっているのを軽く確認する。
ゲーム内が日本語なのは東京サーバーだけらしい。
あとは英語とかの他言語になっているそうだ。確認してないからわからないけど。
ゲーム内は6倍加速であまり意味はないものの、それぞれに合わせたサーバー時差もある。
あ、おう?
ログインしようとして画面を見ていたら、静止画の立体映像だったタイトル画面が動き出した。
そういう仕掛けもあるんだ。ほーん。
翡竜と城下町の絵だったのが、翡竜が飛んでいき、町の一角をアップにする。
人々が歩いている。
人間、エルフ、獣人いつものメンバーだ。
あんまりいないけど、ドワーフ、ジャイアント。
プレイヤーではたまに見かけるハーフリングもいる。
ハーフリングを選んでいたら、もっと小さいのかもしれない。
当たり判定は小さいんだろうけど、力とかどうなってるのか謎ではある。
あとそれから、体重と防御とか踏ん張りの関係とか。
なかなか謎は多い。
おっと、待たせていると悪い。ログインしよう。
ブーン。
ログイン時の効果音だ。
注意深く見てみると、視界の隅に「無敵状態:13秒」の表示。
なるほど、ログイン時は無敵状態になるんだ。
これ使えば、ボス前でログインしなおして、無敵の間に敵を殴れば、無敵では?
いやあ、さすがに無理か。
リズちゃんは、まだログイン前みたい。
フレンドリストの表示がグレーアウトしている。
「あ、あの、すみません」
「なんだい、お嬢様」
お兄さんに質問してみたけど、なんか笑顔を向けられる。
そういえば、女の子の格好だったわ。
「ふえぇ、あ、そうだった。はい、あのすみません。ログイン直後って無敵状態なんですよね? このまま敵を攻撃して再ログインを繰り返すとずっと無敵になったり?」
「あーそれはやめたほうがいい。連続して2回以上再ログインしても、無敵状態は延長されたりしないんだ」
「なんだ。じゃあ無理なんですね」
「そういうこと」
なぜか親指をぐっと上に向けて、グッジョブみたいなポーズをする。
そしてニコっと笑う。
「そういう着眼点はいいよ。いいゲームライフを」
またニコっと笑うと行ってしまった。
イケメンかもしれないけど、じゃっかん暑苦しいかもしれない。口にはしないけど。
変わった人もいる。というかけっこう多いような気がする。
大丈夫なんかこのゲーム。
まあ変な人という意味では僕も十分、突然質問する不審者かもしれない。
今度から、気を付けよう。
適当に周りの人が歩いているのを見て、人間観察をしている。
ここでログインしてくる人が多いと思ってたけど、その半分以上はログインじゃなくて、クリスタルの転移のほうみたい。
パーティー単位とかで、飛んでくる人もいる。
兵士さんぐらいの強い人はあまりいない。
ここは一応、始まりの町で、メインの集合場所はおそらく首都っぽい場所なんだろう。
比率でいえば、男の人が多いけど、思ったよりは女性もかなりいる。
中には中学1年生ぐらいの子とかも、ちょくちょく混ざっていて、お兄さんは少し心配になってしまうよ。
お腹が空いてきた。
「お肉! そうだ、お肉3つください」
「あはははは。はい、どうぞ」
お肉の串焼きを3つ買う。
そうだった。
こういうRPGでは、なぜか知らないけど噴水広場で始まったり、近くに肉串屋さんが売っているというのが、伝統らしいのだ。
忘れていたけど思い出した。
「おいしー、うま、うま」
お肉の串焼き美味しい。
あっという間に1本食べきった。
う、もっと食べたい。
「これは妹とリズちゃんのだけど、また買えばいいよね」
ぱくっ。もぐもぐ。
「おいしぃすぎるう、ずるい、おいしすぎ」
お肉が美味しい。
リアルのお肉、たぶん合成肉だと思うんだけど、こんなに美味しいとまでは思ったことがない。
なんだろう、これ。
リアルだったら、太ったら困るって考えそうだけど、ここでは食べても大丈夫。
へへへ、おいしい。
あっ、お肉の3本目を食べていたところ、リズちゃんが転送されてきた。
ブーン。
やはり音が鳴って、キラキラした粒子と輪っかのエフェクトが付いている。
このエフェクトが無敵を表しているのかもしれない。
無敵かどうか物騒だけどここで斬り掛かっても、元からPKできない仕様なので検証は無理だけど、そこまでして知りたいとも思わないか。
「あ~~ひとりで悪い子だ」
「ぎくぅうう」
「ワイちゃん、お肉食べてるう」
「ぎくぎくぅ」
もぐもぐ、ごっくん。3本食べてしまった。
「あ~あ、全部食べちゃった」
「あっリズちゃん、すぐそこで売ってるから、ほら妹の分もあるし、すぐ買ってくるよ」
「うん」
やれやれ、なんとか難を逃れたのだった。
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