2 チュートリアル

 画面設定の謎空間から、草原が広がる小島に転送されてきた。

 周りは見渡す限りの海で、綺麗な海がどこまでも広がっている。


 アニメ調だけど、その景色は絶景だった。


「ほう、いいところだね」

「ここもなかなか、好きな景色です。ゲーム内で再び来るのは大変だけど、いいところだと思います」

「そうだね」


 海岸にはカニとヤドカリが走っていった。


「では、まず剣の練習をしますので、剣をプレゼントします」

「ありがとう」


 剣を異空間から取り出すと、僕に渡してくる。

 ブロンズ製だろうか、ちょっとオレンジ色をしていて、鈍く輝いている。

 昔の新品の十円玉や銅メダルみたいな感じだろう、テレビで見たことがある。


「どうですか?」

「あ、うん。思ったよりは重くない」

「そうですね。ほどほどちょうどいい感じに調整してあります」

「なるほど」


「では、敵のスライムを召喚します」


 緑色の丸いスライムが出てきた。


「斬りつけて攻撃してください」

「あ、うん」


 スライムにちょっと可哀想だけど、剣で攻撃を加える。


 ダメージの白い数字が空間に浮かび上がって、ここが仮想空間なのを思い出す。

 アニメ風だけど、なんか妙な現実っぽさがあるんだよね。


 見ていたら、スライムの体当たりで、自分がちょっとダメージ。

 緑のHPバーが一割ぐらい減ってしまった。


「ささ、敵を倒しましょう」

「あ、うん」


 再び剣を振るったらスライムは霧になって消えてしまった。

 地面には、ポンって六角形の黒っぽい宝石みたいなものが落ちている。

 それを手で拾おうとすると、光に変わって僕に吸収されていく。


「アイテムボックスと念じてください」

「あ、うん。……アイテムボックス」


 すると空間に画面が浮かんで、そこにさっきの『スライムの核』が収まっていた。


「あ、はい。了解です」


「では次、行きますよ。こちら、おいしいポーションです」

「おいしいの?」

「はい」


 小さめの試験管みたいなものを渡される。


「次はちょっと強いです。倒せなくてもいいです。HPが減ったら回復するのが目標です」

「わかったよ」


「では行きます。ゴブリンちゃんカモーン」


 緑の肌で髪の毛がないゴブリンが召喚されてきた。

 敵は真っ黒い剣を持っている。


「ちょっと強そうだ」

「はい、今だと強いですよ」


 こちらはティーシャツに短パン装備だ。防御力なんてないに等しい。


「えいやぁ」


 剣を振るうと、ゴブリンのHPは三割減といったところ。

 すぐに反撃され、僕はダメージを食らう。

 痛くはないが、当たった感覚はある。

 これは心臓に悪い。


 僕のHPは半分くらいになってしまった。


「そこでポーションです」


 ポーションのふたを取ってゴクリと飲み干す。

 すると甘いメロンみたいな味。

 緑色のプラス数字が表示されHPが一瞬で回復した。


「なるほど」


「ごぶごぶ」


 ゴブリンが鳴いて挑発してくる。


「おりゃあ」


 僕が剣を振るってゴブリンにダメージ。

 だけど今度はゴブリンの剣が光り出し、技を使ったみたい、一瞬で僕のHPがレッドゾーンまで減り、そのまま0になってしまった。


 僕はくらくらして、そのまま倒れてしまう。


「やられてしまいましたね」

「うん……」


「このような状態を『戦闘不能』といいます。俗に死亡っていいますけど、厳密にはまだ死んでいません」

「そうなんだ」

「そうなんですよー。そこにカウントダウンが見えますか? 今50ですね。1分すると死亡扱いになります」

「あ、なるほど」


 そのままカウントが減り僕は転送されて、少し離れた魔法陣が地面に描かれた場所に出現していた。


「と、まあ助けてもらえないと、このようにリスポーンします。デスペナ、死亡ペナルティはないのですが、復活した直後はHPとMP、スタミナは1の状態です」

「あ、本当だ」


 HPがレッドゾーンで点滅している。

 MPバーというのも一緒に出ていて、こちらもバーが黒くなっている。


「HPなどは時間経過で回復するので、そのまま待っててもいいですよ」

「うん」

「でも、料理なんかもおすすめですね。今回ははい『ピクシエル特製サンドイッチ』なんてどうですか」


 そういうと鶏肉とレタス、薄切りトマトのサンドイッチを出してくれた。


「あ、うん、もきゅもきゅ」


 おいしい。サンドイッチおいしい。

 仮想世界なのに、料理はすごくおいしい。これならずっとこっちの世界に居てもいい。


 継続回復というやつだろう、徐々に回復していく。

 料理にはこういう効果があるんだね。


「よろしいですか?」

「うん」

「では次は魔法の勉強です」

「魔法、魔法なんだ」

「はい。こちらのレシピを使ってください」


 そういうと紙切れに読めない英字で書かれた『火魔法のレシピブック』というアイテムを貰った。


「使う!」


 紙が光って僕に吸収されていく。

 紙は消えてなくなってしまった。


「それで、ファイアの魔法が使えます」

「おお」


「スライム出しますね」

「うん」


 今度も緑色のスライムだ。


「ファイア!!」


 僕は手を突き出して、魔法を唱える。指先から火の玉がスライムに飛んでいき、ぶつかって消える。

 またダメージの数字が飛んで、スライムも煙に消えた。


「おお、ちょっと強い」

「はい、魔法は連射などが難しい代わりに、ちょっと威力は高めです。戦闘ではアタッカー、ダメージディーラーという役割を担っています」

「なるほど。あ、うん」


「片手剣の人の多くは盾を持って、敵の攻撃を防ぐ仕事をします。タンクと呼びますね」

「あ、うん……」


「そして最後にヒーラーです。魔法なのですが、回復魔法やステータスを上げる補助魔法を使うのがジョブでいうプリースト、ヒーラーです」

「なんとなくわかるよ」


「では次はヒーラーをやってみましょう」


「基本魔法、ヒールのレシピを渡します」

「あ、うん、ありがとう」


 僕はヒールを習得した。


「まずは仲間を召喚します。ホーンラビットのラビラビです」


 ピクシエルちゃんが手をかざして、光が飛んで集まっていき、ウサギになった。


「きゅぷ」


 白いホーンラビットつまり一角ウサギだった。


「この子はテイムモンスターで仲間です。攻撃してはいけませんよ。絶対ですからね」

「あ、はい」

「次に敵さん、スライムを召喚します」


 今度は水色のスライムが召喚された。


「ラビラビ攻撃してください」

「きゅぷぷ」


 ラビラビがスライムに攻撃を開始する。

 スライムも反撃してきて、ラビラビのHPが少し減った。


「今です。プレイヤーさんヒールをラビラビにです」

「うん、ひ、ヒール!」


 緑色の光がラビラビに飛んでいき、HPを回復させる。

 そうやって戦っているうちにスライムを倒していた。


「そうです。よくやりました。戦い方はだいたい覚えましたか?」

「あ、うん。だいたいは」


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