第98話 王族

――スパム邸、執務室。


「ポッポゥ推参!」


「ほっほっほ。お待たせしましたな」


一月経ち。

火の粉と、そもそも姿が全く見えなくなっていたポッポゥとタニヤンがメガ精霊になって帰って(?)来た。


「領地の方は問題ありませんが……戦争が始まってしまいました。戦況は余り宜しくないようです」


「ほうほう」


ジャガリックが戻ってきたタニヤンに状況を説明する。

戦争開始からまだそれほど時間はたっていないが、ポロロン王国側が劣勢という報はこの僻地のスパム男爵領にまで届いていた。

兄であるガイオスが戦死したぐらいだから、相当な物だろう。


あいつ、性格は悪かったが戦闘能力はぴか一だったからな……


え?

血が繋がった家族なんだから生き返らせてやらないのか?


もちろん……蘇生する訳がない。


あいつとは血が繋がってるとは言え、死ぬほど嫌いだったしな。

そんな相手を蘇生してやるほど、俺はお人よしではない。


何より、死者蘇生を周囲に知られるのは宜しくないからな。

ランクアップ位ならいいが、死者蘇生は知られると絶対碌な事にならないのが目に見えている。

特に戦時中なら猶更だ。

絶対隠しておかないと。


「敗戦の可能性が高いとなると……こちらから、戦争へアプローチする事も考えないといかんかもしれんな」


「まあそうなんだよな」


この領地が戦火に巻き込まれる心配はない。

ここまで攻め込まれるとか、もう国内が焼野原状態だからな。

流石にその前に王家が白旗を上げるだろう。

仮に王家が白旗を上げなくとも、貴族連中が離反して結局ってなるだけだし。


なので、領地が危険にさらされる心配はない。

問題は、敗戦後の処理。

要は属国になった後だ。


過去の帝国は、現地の貴族をそのまま採用する形で併呑した国の統治に使っている――そうしないと、貴族共が最後まで徹底抗戦を続けて面倒くさい事になるから。

なので今回も同じ扱いになるだろう。


勿論、帝国法が適用されるしある程度の監視もつくので、これまで通りとはいかないが。

とにかく、貴族は貴族として、ある程度の生活の保障がされる訳である。


じゃあ負けてもそれ程もんだいない?

いいや、大ありだ。


貴族は兎も角、王族の権利は大きく制限され、その生活も管理される事になる。


何故なら、反乱の旗印になる可能性があるからだ。

王家の血筋ってのは。


さて、ここで問題で。

俺、エドワード・スパム男爵は王族でしょうか?


答え――王族です。


え?

除名されたじゃん?


そんな物関係ねぇよ。

王家がどう判断を下したかどうかなんて、帝国からしたら些細な問題でしかない。

重要なのは、王家の血を引いているって点だ。


しかも俺直系だし。

旗印として満点もいい所である。

見逃して貰える訳がない。


という訳で、この国が負けたら俺も自動的に帝国の管理下――監禁状態に置かれる事になるって訳だ。


――まあこれは全部ジャガリックから伝えられた事だけど。


まあなんにせよ。

そんな息苦しい生活など御免なので、俺的に、国には最悪引き分けに近い和解に持ちこんでもらう必要がある。


「あんまり戦争に関わるのとか、乗り気しないんだがなぁ……」


メガ精霊に進化した4人の力なら、戦争に大きな影響を与える事も出来るだろう。

だがそうなると、そいつらどこから拾って来たんだって注目が、無駄に集まってしまう。

平穏に過ごすのなら、メガ精霊の力を見せつけるのは避けたいところだ。


まあなにより、精霊達に人殺しを依頼するのは……


「心中、お察しします」


「まあまだ負けると決まった訳じゃなかろう。何らかの反撃の手を残しておるかもしれんし、もうしばらくは様子を見られてはどうじゃ?」


「そうだな。戦況が好転する事を祈るとしよう」


がんばれ王家!

負けるな王家!


俺の応援が届いたのか、この後、劣勢だったポロロン王国側が持ち直し、状況は拮抗する事となる。

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