第94話 メガ盛り
「奇跡の大生還!」
「長らくお待たせいたしました。マイロード」
ランクアップを行いジャスト一か月。
水と土くれになっていたカッパーとジャガリックのランクアップが終わり、二人が元気な姿で戻ってきた。
のだが――
「……」
「おや?どうしました?そのカッパーに対する熱い視線は」
「いや、熱い視線って言うか……その胸……か?どうなってるんだ」
カッパーの胸部はとんでも無い事になっていた。
たぶん胸何だとは思うが、そのサイズはデタラメで、胴体よりも大きい。
その珍妙なスタイルは、遠くから見たらきっと新手の魔物か何かに見える事だろう。
「ああ、これですか。盛ってみました。メガ精霊になったので」
メガ精霊になる事と、胸を奇形レベルに盛る事にいったい何の繋がりがあると言うのか?
「母性が爆発って奴です」
相変わらず何を考えているのか分からん奴だ。
「母性爆発はいいんだが、爆発しすぎてフェンリルが警戒しまくってるぞ」
「ううぅー」
フェンリルはカッパーが大好きなので、戻ってきた彼女に喜んで飛びつきそうなものだが、その珍妙に変形した姿を警戒してか、尻尾を立てて牙をむいて思いっきり警戒態勢を取っていた。
「おやおや、反抗期ですかねぇ」
「これカッパー。馬鹿な格好をしておらんで、普通に戻らんか」
「むむ。大精霊如きが、この偉大なるメガ精霊であるカッパー様に命令しようと言うのですか?」
「なんじゃ?文句でもあるのか?」
「うっ……まあ、同じ精霊同士ですし。タニヤンも直ぐに同じメガ精霊になる訳ですし、顏を立ててあげるのが筋ってものですね」
生意気な事を言ってタニヤンに睨まれたカッパーが、直ぐに顔色を変えて萎縮する。
どうやらメガ精霊になったからと言って、苦手意識は消えたりしない様だ。
良い事である。
「ぷぎゃぷぎゃ!」
「おー、よしよしよしよしよし」
胸部が縮み、警戒を解いたフェンリルが飛びつく。
それをカッパーが抱きしめて、狂った様に撫でまくった。
その様子に俺の脳内で動物王国のムツゴロウさん浮かんだが、まあそんな事はどうでもいいか。
「相変わらず、訳の分からない奴だな」
「見てて飽きないわぁ」
「ほう……エクスさんにタゴルさん。それにナタン殿も、相当力を上げられたみたいですね」
ジャガリックは、一目見ただけでタゴル達がランクアップした事に気づいたようだ。
流石メガ精霊。
さすめがである。
「護衛騎士ですもの。精霊ちゃん達におんぶに抱っこじゃ格好つかないでしょ」
「素晴らしい事です」
因みに、ランクアップさせたのは護衛の二人とナタンだけではなかったりする。
実はアリンとカンカン、それとユミルも限界突破させている。
二人から強くなりたいって、頼まれたからだ。
もちろん……タゴルにはバレない様こっそりとやったぞ。
シスコンは五月蠅いからな。
「さて、では次はわしらの番じゃな」
「エクスにタゴル。私が不在の間、マスターの事はよろしく頼んだ」
「任せて頂戴」
「おう」
カッパーとジャガリックが終わったので、次はポッポゥとタニヤンの番である。
「ジャガリックとカッパーもよろしく頼んだぞ」
「お任せください」
「果てしなく面倒くさいですが……まあでもカッパーはメガ精霊ですから、ちゃんとフォカパッチョノ面倒は見てあげますよ。そう、カッパーはメガ精霊ですから」
カッパーはことさらメガ精霊である事を強調する。
成長できたのが嬉しいんだろうが、なんかちょっと、こいつが偉そうにするとイラっと来るんだよな。
「やれやれ。カッパーを見ていると、不安でしょうがなくなってくるわい。ジャガリック、しっかり手綱を引いてやってくれ」
「お任せを」
「むう……もっと偉大なメガ精霊であるカッパーを信頼して欲しい物です」
そういう発言をする所が、信頼たりえないんだが……まあ言っても無駄だろうな。
「それではエドワード殿。よろしくお願いしたいします」
「分かった」
俺はタニヤンとポッポゥをランクアップさせる。
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