第79話 うはうは

一週間がたち、訓練組が返ってきた。

エクスは出発前と様子が変わらなかったが、一方のタゴルは身に着けている物がボロボロである。


タゴルの訓練的側面もあるので、死の森では基本彼が戦っいたためだ。

エクスの方の仕事は主にそのサポートである。


「おお、随分とたくましい感じになったな。今のお前を見たら、きっとアリンも感心するぞ」


――俺は上機嫌でそれを迎え入れる。


何故機嫌がいいのか?


簡単な事である。

ポイントが大量に稼げたから。


一週間で入ってきたポイントは何と2万にもなる。

完全にウハウハだ。


因みに、魔物から得られるポイントの量は相手の強さで変わる様だった。

死の森で最弱クラスで、Dランクでも弱めのバラックボアは100ポイントだったが。Cランククラスの魔物になると、その10倍の1,000ポイントとか入っている。


何を倒して何ポイント入ったかは、精霊連中とやり取りが出来ていたので確認は簡単だった。


ふふふ……


もしこれを隔週で行えば月4万。

年にすれば50万弱稼げる計算になる。


まあ流石にそれだと酷使し過ぎになるので、月に一度……いや、2か月に一度ぐらいのペースにするのが妥当か。


だがそれでも年間12万ポイント稼げる計算だ。

この稼ぎは大きい。


そりゃ上機嫌にもなりますわ。


「そ、そうか…いや、ですか?」


アリンが褒めると言われ、タゴルが満更でもなさそうな顔になる。

ちらりと信頼度を確認すると、その数値は50パーセントにまで上がっていた。


「流石にそのままじゃあれだし、風呂に入って行け。服も用意しといたぞ。兄としては、妹にボロボロの姿を晒す訳にも行かないだろうからな」


「あ、ありがとうございます」


確認すると更に信頼度が上がっていた。

信頼度を上げるのなら、やはり妹がらみで攻めるのが正解だろう。

最初は地雷みたいな奴だと考えていたが、慣れて来ると案外扱いやすい物である。


まあそれでも、相変わらず不安定な爆弾要素を抱えてる事には変わりない訳だが……


「あら、お風呂。良いわねぇ。男爵様。私もお借りしていいかしら?」


「ああ、構わないぞ」


「じゃあタゴルちゃんが先に入ってね。早くアリンちゃんの顔を見たいでしょうから。私はその後でいいわ」


風呂はそこそこデカく、数人同時にでも入れるサイズだ。

なので一緒に入る事も出来るのだが、エクスは見た目はともかく中身は乙女だからな。

タゴルとは別々に入りたい様である。


「感謝する」


会釈してからその場に荷物を放り出し、ダッシュでタゴルが風呂場に向かう。

余程早くアリンに会いたいのだろう。


因みに、タゴルの荷物は行より相当増えている。

倒した魔物から、高めの素材を回収しているからためだ。

エクスがベテラン冒険者なのでその辺りもぬかりない。


「ふふふ、困った子ねぇ」


「エクスご苦労だったな。実践訓練をした感じのタゴルは、君から見てどんな感じだ」


「うーん……成果は確実にあったとは思うわ。でも正直まだまだって感じねぇ。流石に、一週間ぐらいじゃそこまで劇的な成長って訳にはねぇ。ま、今後に期待って感じかしら」


タゴルはシスコン部分を除けば優れたビジュアルと、魔剣持ちとかいう特性があってちょっとした主人公っぽい所があったから、ひょっとした一週間もあれば劇的に強くなるんじゃないかと思ってたんだが……


ま、そんなの漫画の中だけだわな。


これが漫画やラノベの世界だったら、俺だって自分を強化しまくって今頃無双してるはずだし。

現実は世知辛いぜ。


いやまあ、別段今に不満がある訳じゃないが……


やっぱちょっとぐらい周りからさすさす言われながら、美女にわちゃわちゃ囲まれたいって思ってしまう訳よ。


分かるだろ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る