第26話 エドワード

――魔物を撃退して数日。


「無限ポイント増殖が出来てたら熱かったんだけどなぁ。ほんと、残念だ」


戦いの後、俺は武器をいくつかBランクへとランクアップさせていた。

なにせ使徒が増えて、すぐ信頼がカンストする訳だからな。

それだけで10万5千ポイントが増えるのだから、量産しない理由などない。


だが期待に反して、使徒としてのエゴウェポンは武器種ごとに最初の1本だけだった。


2本目以降にも意思は宿るのだが、それらは全て最初の1本目であるナタンやユミルの分身の様な物であるためか、残念ながら、使徒や忠誠関連のクエストには影響しなかったのだ。


【無限ポイント増殖編・完】


で、まあ、それでも一応、鉈と弓以外——槍、斧、ハンマーに関しては自我持ちを生み出せた訳だが、彼らはまだ目覚めていない状態となっている。

どうやらある程度適正な持ち主が現れない限り、意識は目覚めないっぽい。


『ご安心ください。我らがこの身命にとしましても、必ずや神の御身をお守りいたします』


「ああうん、ありがとう」


そういう問題ではないのだが、ナタンの固い意気込みに礼を言っておく。


「領主様。朝ご飯の用意が出来ましたー」


アリンが、用意した朝食を俺の前に運ぶ。

いま彼女は俺の護衛兼、世話係としてこの屋敷に住み込みで働いてもらっていた。


「ありがとう。アリン」


そしてナタンがこの場にいる事から言うまでもないとは思うが、所持者であるタゴルも一緒に護衛として働いていた。


「……」


タゴルの俺を見る目は相変わらず厳しめだ。

彼の信頼度は現在7%だから、まあそれも仕方ない事ではあるが。


え?

前より下がってないか?


うん、下がってるよ。

3%程。


理由はたぶん、子供である妹のアリンを働かせてるせいだと思う。

シスコンだからね、タゴルは。


ほんと、面倒臭い奴である。

信頼度マックスになるのはいつの日やら。


「さて、じゃあ村の様子でも見に行こうか」


食事を終え、俺は村へと向かう。

特に用はないんだが、デイリーのウォーキング達成に丁度いいから。


大量にポイントを得たとはいえ、無限には程遠い。

なので、こういった塵も積もればの努力は続ける必要があるのだ。


あと、動かないとまた太ってしいかねないからな。


え?

敏捷性を上げればいい?


嫌だよ。

くっそ痛いし。


「フォカパッチョ。今日、私の友達が着くそうですから。例の件、お願いしますね」


屋敷を出ようとしたら、池からカッパーが出て来て俺にそう告げる。


「ああ、わかった。ところで……俺はもう太ってないんだが?」


フォカパッチョは精霊語で豚野郎を意味している。

確かに初めて会った時はだるんだるんの無様な身体つきだった事は認めるが、今の俺は敏捷性を上げた事で標準的な体系になっていた。

なので豚野郎呼ばわりされる謂れはないのだ。


「おや?ご存じないんですか?」


「何をだ?」


「あだ名ってのは、新しいのが付けられるまで基本そのままなんですよ?ご存じなかったですか?」


子供のころに付けられたあだ名が、成人しても続くなんてのは確かにない話ではない。


が――


「それは特徴がそのままのだった場合の話だ。太ってるならともかく、もう違うんだから相応しくないだろう。そもそもそんな悪口以外何物でもない言葉を、あだ名って認めた覚えはないぞ」


「やれやれ、人間ってのは本当に我儘ですねぇ。分かりました。新しいのを考えますので、それまではフォカパッチョで我慢しててください」


え?

なに?

俺がわがまま言ってるのか?

これ?


「はぁ……新しいのとかいらないから、俺の事はエドワードって呼んでくれ」


こいつにあだ名をつけさせると、絶対変なのになる確信がある。

なので不通に名前で呼ぶように俺は求めた。


「しょうがないですね。そう呼びましょう。あ、因みに、エドワードって精霊語で糞便漏らしって意味になります」


「……いやもうフォカパッチョでいいわ」


流石に糞便漏らしよりかは豚野郎の方が幾分かまし。

そう思った俺は、そのままでいいとカッパーに伝えた。


……精霊語って、汚い言葉多いんだな。

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