君色イントロ

君影 奏

最後の大会

 青い地面と何本もの白い線が伸びていた。

 観客席には横断幕と豆粒みたいな人が見えて、それらはおぼろげに蠢いていた。

聞こえるはずの歓声が耳に入らない。内側から刻まれる呼吸と心臓のリズムだけが音のすべてだった。

 数メートル先のゴールテープ。

 ハイペースを維持しながら胴体を通す。

 ピストルの音が空に木霊して、鼓膜がようやく生き返った。

身体はとうに力尽き、よたよたしながらトラックの真ん中へ逃げて大の字に倒れた。

白く濁った空を眺めながら、何度も胸を上下させて肺に酸素を入れる。

『中学女子で日本一』

 その事実だけが私の意識にあった。

 でも、なぜだろう。

 これまでの満たしていた圧巻の気持ちよさはなかった。

 おもえば――このわずかな違和感が、陰りのきっかけだった。

 観客席が熱狂に包まれる中、世界は、私を置いて加速した。

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