第7話 具現化のトリガー

 カタギリを守るためにハルシが吹き飛ばされた後、球体の悪魔は自己再生をしていた。カタギリが気づいた時にはほとんど元の状態に戻っていたが、確かに球体の悪魔に数センチの切り傷がついていた。


『ヤッホー! カタギリっち!』


 どこからともなく、少年のようなあどけない声が聞こえてくる。


「その脳内に直接喋りかけてくるの、マジでキモいんでやめてください。校長」

『てへっ!』


 下を出しながらウインクをする校長の姿が浮かび、苛々する。


『ところでどうよ、ハルシくんは。素晴らしい身体能力でしょ』

「どうよも何も、刀身が出せなきゃ意味ないでしょう」


 球体の悪魔の突進。あれを初見で避けた時には流石に驚いたが、不全刀を使えないのであれば、ただの運動神経の良い一般人だ。


『そこはカタギリっちが何とかしておくれよ』

「初めから拒否権なんてないじゃないですか」

『てことは何とかできるわけだねー?』


 不全刀は、自身の潜在能力を刀身に具現化する。通常、対魔剣士である素質を持つもが握れば、未熟であれ刀身が現れる。しかし、茜ハルシにはそれができない。初めは対魔剣士の素質が存在しないのではないかと思った。けれど、


「ハルシ次第です」


 具現化のトリガーが別にあるとするならば、可能性は開ける。


『さっすがー! あ、そういえばカタギリっちが貸出申請してた悪魔。形態変化するやつに変えといたから』

「はぁ!?」


 それ以降、校長からの声が聞こえることはなかった。 

 悪魔の中には形態変化をものが存在する。その仕組みは完全に解明されたわけではないが、悪魔が身に危険を感じた時、若しくは、敵対するものが弱った時にその変化は起きる。


「あのクソガキ……」


 カタギリは踵を返し、ハルシの元へ急いだ。

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