第7話 温泉旅行編2日目3
「先生~財布がありましたよ~!しかも2つ!そこにいる女の人二人の身分証明がどっちも出てきましたー!」
なぜ、一つしかないバックから二人分の財布が出てくるんだ…これじゃあ、どちらが持ち主かわからないじゃないか。
「ちょっと!何でアタシのバックからアンタの財布が出てくるのよ!」
「それはこっちの台詞なんだけど!いつの間に仕込んだのよ!」
また喧嘩してるし…これじゃあらちがあかない。
「春、そのバックの中には財布の他に何が入っているんだい?」
私は、バックを漁る春に他に何があるか訊いてみた。
「あとは~化粧品と、ハンカチと、ティッシュと、ペットボトルの水と、サングラスと、セロハンテープと…え?下着…?」
は?
「「ちょっと、大声で言わないでよ!!」」
なぜ、バックから下着が出てくるんだ…聞いてはいけないものを聞いてしまったような…
「「アンタは忘れなさい!」」
柳さんと橘さんが、二人して私を睨み付けてきた。
理不尽だ。
「そもそも、何でバックに下着なんか入れてるんですかぁ?」
春、訊くのは結構だが、そんなに大声でいうんじゃない。
しかも、ちょっと引いてるし。
「…今日…~~日なのよ…」
「…アタシも…だから念のため」
?まったく聞き取れなかったんだが。二人とも顔を赤くしてるし、そんなに恥ずかしい事なのか?
「え?聞き取れませんよ。もっと大きな声で言ってくれないと!」
この娘は鬼か何かかな?恥ずかしがってるところに、追い討ちをかけてるし。
「「だから!……~~の日なのよ」」
「…あー!」
ようやく分かったのか、春が手を叩く。
「せいr「「わーーーー!!」」」
私の耳元で、二人していきなり大声で叫ばれた為に、ものすごく耳が痛い…
「アンタ!ちょっとは空気を読みなさいよ!」
「なんだって、男が居るところでそんなに大声で言うのよ!」
二人して春に駆け寄ると、思い切り春を睨み付けていた。
「まぁまぁ、いいじゃないですか。せいr「「わーー!!」」なんてどうやったってなるんですから。私もありますよ?」
「だからってこんなところで普通大声で叫ぶ!?」
「ありえない!バカでしょ!アンタバカでしょ!」
メチャクチャ言うなこの人達。まぁ、大体察したけど。
「でも、そうやって走れるほどなら、案外大丈夫なんですね」
「今日はまだ軽い方なのよ!」
「だから走れてるんでしょうが!」
これ、私が聞いてて大丈夫なのだろうか?
もはや二人も暴露してるようなものだし。
「とにかく!もう下着はいいでしょ?」
「そうよ、ってか訊く必要ないでしょ」
「ま…まぁ、確かに」
「いっそのこと弱味でも握れそうな二人だなぁ」
恐ろしいこと言うんじゃない。
なんだって、この二人の弱味を握らなきゃいけないんだ。
さてと、これはちょっと面倒だぞ、持ち物から犯人が分かると思っていたのに、まさか全部調べても分からないとなると、何か別の方法を考えなければ。
「どうします~先生、このまま帰っちゃいませんか?」
「帰れるわけないだろう。まだ、解決どころか手がかりすらないんだから」
「そうよ!こんなことで犯罪者呼ばわりなんて、絶対にアタシ嫌よ!」
「アタシだって嫌よ!さっさと白状しなさいよこの引ったくり犯!」
「それは、アンタでしょうが!」
「はいはい、喧嘩はダメですよぉ~」
柳さんと橘さんが喧嘩しそうになっているところに、またしても春が仲裁に入ろうとする…のはいいけど、だから何で猫じゃらしを持っていくんだ。
「ほ~れほ~れ」
「「アタシは猫じゃない!」」
すごい、息ぴったりだ。
「というか、何で春はさっきから猫じゃらしを持っていくんだ」
「だって、こういうのをキャットファイトって言うじゃないですか」
まさかの渾身のボケだったの!?
いつか、誰かにやり返されるんじゃないか?
「キャットファイトって言っても、本当に猫が喧嘩してるわけじゃないんだから」
「猫みたいな気性の荒い性格してますよ?あの二人」
余計なこと言うんじゃない。
聞かれたら、また怒ってくるぞ。
とりあえず、柳さんと橘さんには他にも訊きたいことがある。
「すいません。お二人はここに来る前は何をしていたか、なるべく今日一日全ての出来事を話していただきたいのですが」
「え?あぁ、今日は朝からお土産を探しにいろんな店を回ってたわよ」
「アタシは朝に旅館でお風呂に入ってから出掛けたわね。目的はそこの女と同じでお土産探しよ」
ふむふむ、出掛けた目的は二人とも同じ理由…と
柳さんだけお風呂に入ってからと言ってたから少し遅れて出掛けた可能性があるな。
「では、今日出入りしたお店を一つ一つ教えていってもらってもいいですか」
「えぇ」
「いいわよ」
二人から、それぞれ今日一日でまわった店を一件一件訊いていく。
そして、それをメモしていくとある事に気がついた。
「おや?お二人のまわったお店…後半の二軒は同じお店なんですね」
「ホントだ…アンタもしかして、この時からつけてたの?」
「はぁ?それはアンタでしょ?」
やっべ、また喧嘩になりそう…そして、春は私の後ろで猫じゃらしを構えるんじゃない…いい加減しつこいよ。
キラン!
フリフリ
ニヤリ
目を光らせるんじゃない、猫じゃらしを振るんじゃない、ニヤケ顔で歩み寄るんじゃない。
私は、二人に気づかれないように春の肩を掴んで動けないように抑えた。
「先生、いじれるチャンスは逃しちゃダメなんですよ」
「そんなチャンスは金輪際まわってこなくていい」
「チャンスを逃して何が探偵ですか!」
「そんな探偵聞いたことないんだが!?」
そういえば、二人にもう一つ訊いておかなければいけないことがあった。
「すいません」
「「なによ」」
ドスの効いた声で、返事しないでほしいものだ。
「そういえば、お二人はいつからこちらにいらしているんですか?」
「アタシは2日前からよ」
「アタシは3日前」
橘さんが2日前、柳さんが3日前か、私達とほぼ同じ頃って考えてよさそうだ。
「お二人は今日でお帰りに?」
「明日よ」
「アタシは明後日」
橘さんは明日には帰ってしまう。となると、今日中に犯人がどちらなのかハッキリさせておかないといけないな。
今ここで話しててもキリがないな、二人が今日まわったお店に行って話しを訊いてみるか。
「とりあえず、今日お二人がまわったお店を後半の2店舗でいいので行ってみませんか?お店の人から話しも訊いてみたいですし」
「そうね、ここにいてもラチがあかないし、いいわよ」
「確かに、いつまでも言い争っててもしょうがないものね」
「お土産追加確定!」
春よ、お土産目当てじゃないからね。
そこから、二人に案内してもらい、まず立ち寄ったのは糖恋(とうれん)と言う名のお店だった。
「あの~すいません」
「いらっしゃいませ~」
私は店員の方に、柳さん達の顔を見せて話しを訊いてみる。
「こちらの二人に見覚えはありませんか?」
「えぇ、先程ご来店していただいたお客様ですよ。お二人とも見覚えがあります」
「このお二人が何を買っていたとか覚えていらっしゃいませんか?」
「いや、何も買っていきませんでしたね~。一通り店の中を見てまわってそのまま立ち去って行ってしまわれたので」
「そうですか。ありがとうございます」
「先生!ここの栗最中(くりもなか)すごく美味しそうです!」
だから、お土産買いに来たんじゃないってば。
「すいません!栗最中5箱ください!」
「ありがとうございます~」
5箱って…買いすぎだよ。
荷物増えたし…
しょうがない、もう一件のお店に行ってみようか。
次に行ったお店は、山丘(やまおか)というお店だ。
「すみません」
「はい、いらっしゃいませ」
私は、先程の店と同じように店員に話しを訊いてみた。
「こちらのお二人に見覚えはありませんか?」
「あぁー、うちでお菓子を買っていたお二人ですね。覚えてますよ」
ここでは、二人は買い物をしたのか。
「お二人は何を購入したんですか?」
「この店限定の金平糖をお買い上げになってましたよ」
金平糖か、なかなか珍しいな。
「その金平糖はどの商品で」
「すいません!これください!」
私と店員の間に、春が割って入り込み、お菓子の箱を3箱買おうとしていた。
まだ買うの?
「あぁ、ちょうど今この娘が持ってきたこの商品ですよ」
「え?」
私はカウンターに積み上げられた箱を見る。
「これか」
「お会計3000円ね」
「はーい!」
春は、財布を取り出そうと荷物を床に置いてポケットを漁る。
「おや、そのバック…人気なんだね」
「え?」
店員が、春の持っていた二人のバックを見て呟いた。
「人気って…そんなに何度も見かけたんですか?」
「見かけたっていうより、そこの二人がどちらも使っていたので人気なんだなって思いまして」
二人とも使っていた?なら、もう一つのバックはどこに?
「そうですか、ありがとうございます」
店に入ってから、また新しい謎ができたな。引ったくられそうになったバックと、もう一つ、実は同じ種類のバックがあったということだ。
そして、そのバックは一体どこに?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます