第2話 アイタイ

あの海には、亡くなった者が

神になって、姿を変えて

暮らしていると。


溺れそうなとき、

その姿を変えた者に

助けられたと。


恐ろしい

悲しい

懐かしい姿だったと。

覚えていないが、

助けられた後、泣き崩れたと言っていた。

恐怖ではなく、懐かしい者が

もういないと 改めて

突きつけられたようで。悲しかったと。


それじゃ、オトウは、

死んだらあの海にいくの?


_あぁ。

--

地元に帰ってきた。

暑い日差しだ。

墓参りをしに来た。


あの海がある。

恐ろしいと思った。

地元の人は自慢の海だと。


父から、変な昔話を聞いたからだろうか。

あの海を恐ろしいと思う。

深く、青い、透明な

海の中に、姿を変えた者がいて、

私の足をつかみ、引きづるのではないかと。

あまり海には近づきたくないが、

今日は命日だ。

--

あれ、あの子だねぇ。

帰ってきたらしい。


あぁ、あの子は知らないのかね。

墓の中には入ってないと。


あー、あの父親は、あーそうか。


そうだね。

神様が


全部召し上がったからね。











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