ニラカナのリレー小説大全

nira_kana kingdom

第1話

エイリンゲール・ドゥマニティア・パッキャオは、シリンガルキング王国の王都エディヴァストハンブルグの町外れ、ケッキンガムナーヴァス街にて生まれた。




そこは、豪華絢爛な王都の町並みとは打って変わって、荒廃したスラム街であった。そこに集まるのは大抵、没落した下級貴族や身無し子、犯罪者や国を追われた浮浪者達だ。




街一帯に、スモッグや悪臭が漂い、人々は汚れたボロ切れのような服と脂でギトギトにまみれた髪を引きづりながら生活していた。




そこに住む人々の家は、焦げ茶色に変色したベニヤ板と錆びた鉄のパイプを組み合わせた非常に簡素なものだ。風雨を凌ぐため、屋根の代わりにビニールシートを広げて釘で固定していた。




家が倒れぬよう、杭を地面に打ち付け、ロープを数本パイプに結びつけて固定していた。床は地面が剥き出しになっており、夜は皆地べたに寝転がっていた。




しかし、これが寝づらいの何の。


少し寝返りをうとうとものなら、小石の凹凸が背中や脇腹に食い込み、全身に激痛が走る。


だから、ここに住む者は皆寝不足で、目の下に幅3cm程の隈をつくっていた。




これが、幼少期のパッキャオには恐ろしかった。




「ここの人々は皆化け物か」




「ここは地獄か地の底か」




幾度となくそう思ったか、もう分からない。




しかし、生きていくためにはそこに身を寄せる以外道はなかった。歳上の者に媚びへつらえば、今日の食糧くらいは手に入った。




彼はそこで、悠久とも思える程、長い時を過ごした。時間に換算すればたった7年ほどだが、彼にとっては成長するには十分な期間だった。




やがて、彼は14歳になり、体も大人に近づきつつあった。生きていく為の力と知恵もある程度手に入れた。




そんなある日のこと、彼の脳裏に1つの疑問が浮かんだ。




「この世界は、一体どこまで続くのだろうか?」




そう思うと、彼は外の世界への興味と渇望を抑えることができなかった。




「ダメだ、寝ても覚めても俺は興奮している。そんなの馬鹿馬鹿しいって分かってるのに、外界へのワクワクとドキドキが止まらない。この世界の形を自分自身の目で見てみたい。こんなところで俺は燻っている場合じゃないんだ」




そう言うと同時に、彼は揺るがぬ決意を固めた。




その翌日、彼は少しの食糧と通貨を巾着袋に入れ、厚底の靴と錆びた短剣1本携えて、生まれて初めて外の世界へと旅立って行った。



作者 nira_kana kingdom(ワイ)

https://kakuyomu.jp/users/86409189

代表作「妖気が陽気な妖鬼だYo!!!!」https://kakuyomu.jp/works/16816700428813367884

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