しない理由

僕は、セックス依存症だ。


物心ついた時から、従兄弟専用の玩具だった僕は、小学校高学年からセックス依存症になった。


早い?そうだろうか?


最初から、興味があったのだから仕方ないではないか…。


従兄弟としていたよ。勿論


僕の家系は、綺麗な家系でね。


従兄弟は、本当に美しくて


だから、従兄弟の玩具でいる事は光栄な事だった。


そんな僕が社会人になると、体で仕事をとってると言われた。


それなら、それで構わなかった。


だって、毎日疼くこの熱をなくせるなら、誰でも何でもよかった。


そんな僕が、初めてドラマを任された。


脚本家さんは、無名でもなんでもいいと言われた。


BL作品で、深夜だ。


僕は、片っ端から投稿サイトを確認した。


【しん】


何千もの投稿を読んで、僕は貴方を見つけた。


一目惚れだった。


その作品は、数多のBL作品の中でも、誰かのリアルを抉り取った作品だった。


そう、共感できると感じた。


この人なら、他の視聴者も掴める気がした。


【私は、群がっていた。この、何千万の人混みに紛れいっそ儚げに消えてしまいたかった。子供が、欲しいからこれ以上は竜とはいれない。誇らしげに、話す。学の胸ぐらを掴んで、投げ飛ばしたかった。だけど、出来やしなかった。欲しいと言われるものを、与えられない人間ひとの痛みなど理解している人間ひとならば、取って付けた台詞を私に吐きはしない】


僕は、冒頭から始まるこの文章に引き寄せられるように【しん】の投稿作品を全て拝読した。


全てが、同じように痛くて切なかった。


ただのハッピーエンドに向かう話ではない。


共感を得る事が、出来る。


それは、僕が欲しい支持層とマッチする気がした。


【会いたいです】と言うメッセージは、却下された。


「佐野さん、この投稿サイトの運営会社の人に、この人と繋いでもらえるように言って欲しいんですが…。」


37歳の僕にとって、このドラマは本当に大切だった。


「了解、話つけててやるよ」


佐野さんは、そう言って話をつけてくれた。


最初に会った時のしんの印象は、本当にこの人があの作品をというイメージだった。


それぐらい、どこにでもいる平凡そうな人で、この人からあの台詞の数々が出てくるように思えなかった。


でも、僕はしんに最初から惹かれていた。


多分、作品への愛が強すぎた結果だったのかも知れない。


僕は、出会って半年後にわざと3Pが見れる店に連れてきた。


だって、体の中が疼いて堪らなかったんだ。


僕は、ビッチだ。


だけど、この人に脚本を書かせるためにそれをずっと封印していたのだ。


やっと、味見ができる。


我慢の限界だった。


しんは、僕の理想通りの数字をとってくれた。


支持層も、バッチリ掴んでくれた。


だからこそ、よけいにこの人を抱きたい。


疼く熱に、翻弄されながらも、僕はしんを家に誘った。


初めてだったようで、しんは、大人なのに泣いていた。


「てっきり、そうなのだと…。ごめんなさい」


何度も、伝えた。


「いや、いいんだよ。気にしないでおくれ」


「ビッチの話も書いていただろ?」


「あれは、想像だよ」


しんは、そう言って涙を拭っていた。


「やりたかったんじゃないの?男と」


「どうだろうか?そう思って書いていなかったから…」


「どう思って書いていたの?」


「別れた妻への贖罪の気持ちだったから」


「奥さんも読んでるの?」


「ああ、読んでる。私と妻の秘密の日記のようなものだから」


「どうして、贖罪?」


「子供を授けてやれなかったからだよ」


優しい笑顔で、頭を撫でてくれた。


「林さん、誰かれ構わず寝るのはやめた方がいいですよ」


「何故?」


「こんなに、すり減らしてるのに気づかれないのは、悲しいでしょう」


僕は、涙が止められなかった。


一度抱いただけで、この人は僕の全てを理解しているようだった。


そして、交際を始めた。


僕は、もうしんしかいらなくて、体の疼きはいつの間にか消えていたんだ。

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