モブキャラに転生したのでとりあえず鍛えてみることにした。

黄昏

一章

その剣、まだ誰も知らない


アラン レベル1

体力:F

魔力:G

力:F

速さ:G

耐久力:F

スキル:なし

称号:『転生者』


 


転生した直後のアランの体は、驚くほど貧弱だった。

村の子どもに転ばされるレベル。

杖をついた老人に競歩で負けるほど。


それでも、アランは剣を選んだ。

村長に頼み込んで、錆びた銅剣を一本もらった。

そして、何も知らぬまま、ただ一人で振り始めた。


 


「まずは、千回だな……」


理由もなく、ただの目標として。

最初は五十回も振れば肩が抜けそうになり、百回で手の皮が剥けた。


だがアランは、やめなかった。

止まったら、過去に負けた気がした。


 


──五年後。アランは村を出る。


アラン レベル1

体力:C

魔力:E

力:B

速さ:C

耐久力:D

スキル:剣技レベル13

称号:『転生者』


 


「レベルは……1のままか」

ステータスウィンドウを見ながら、アランは肩をすくめた。


この世界のレベルは、“魂の格”を示すものらしい。

魔物を倒したり、命のやり取りを経験することで、魂が鍛えられ、やがてその器が大きくなる。


けれどアランは、この五年間――

一度も誰とも戦っていない。命を懸けたことすらない。


だから魂の格、つまりレベルは上がらなかった。


 


けれど、それでよかった。

アランにとって必要だったのは、まず“身体”を仕上げること。

魂を鍛えるのは、その後でいい。


「やっと……人並みに動けるようになった気がする」


 


剣を振る。

空気が二筋に割けた。

刃先から放たれた気圧だけで、道の小石が跳ねた。


訓練だけでここまで届くとは、アラン自身も想定していなかった。

けれど、剣を振った分だけ、確かに身体が応えてくれた。


 


「ギルドにでも行ってみるか。そろそろ、魂も鍛えてみたい」


これから戦う魔物も、冒険も、何もかもが初めて。

でも、5年間の剣の重みが、アランの背中を押していた。


 



※世界観補足


レベルアップ=魂の器の成長

→ 経験・感情・死線の突破などで魂が“変質”すると上がる。

→ 逆に言えば、どれだけ鍛えても戦わなければレベルは上がらない。


スキルとステータスは肉体訓練で上昇可能

→ 魔法職や召喚職などは逆に訓練では伸ばしにくい。

→ アランは戦わずして力を得るという、極めて稀な成長ルートを進んでいた。


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