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 僕は勇者の末裔なんだ。その誇りだけは決して忘れないっ!


 これくらいのことで負けてたまるか! ご先祖様みたいな大きな力はまだないけど、いつかきっと強くなってみせる。


「負けるもんかぁあああああああぁーっ!」


 気が付くと僕はカッと目を見開いて叫んでいた。その声はフロア中に響き渡ってこだまする。


 すると次の瞬間、鎧の騎士は見えない結界にでもぶつかったかのように動きが鈍るが完全に沈黙するというところまでは至らない。僕の力不足なのか、それとも鎧の騎士の意思が強いのか。


「う……ぐ……」


 僕にはもはや立っていられるだけの力は残されていなかった。その場にうつ伏せに倒れ込み、鎧の騎士がゆっくりながらもこちらへ歩み寄ってくる足音と振動を感じている。




 ……いや、まだだ……まだ僕は終わらないぞ……。


 奥歯を強く噛みしめ、なんとか起き上がろうと藻掻く。もう僕の体には一滴の力も残っていないかもしれない。乾いた雑巾を絞って力をひねり出すようなものかもしれない。


 だけどわずかでも力が残っているなら、その可能性があるなら、それを出し切るまでは絶対に諦めない。諦めたくないッ!




「……っ!? ぅ……ぁ……」




 突然、心臓が大きく跳ねた。そして指一本すら力が入らなくなり、耳は何も聞こえなくなる。


 世界がグルグルと回るような感覚。寒気がする。全身が痛い。視界全体が暗くなっていく。


 それに……なぜ僕の心臓は動いていないんだ……?


 あぁ……そうか……僕は無理をしすぎたんだ……。


 力を使いすぎたんだ……。


 そうだよね……あんなに強大な力を行使し続けて、何の反動もないわけがない……。僕は自分でも気付かないくらいに限界を超えていて、体に猛烈な負担を与えていたんだ。


 もう助からないって自分でも良く分かる。でも後悔はない。だって僕は誰かを守ろうとして死ぬんだから。勇者の末裔としての誇りを持ってあの世へ行くんだから。



 BAD END 7-5

 

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