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 タックさんが苦しそうな表情をしているので、僕は気遣って声をかけることにした。このまま気絶してしまったり、体調に異変が起きたりしたら大変だもんね。


 僕は力の行使を一時的に中断し、彼の方へ一歩歩み寄る。


「タックさん、大丈夫ですか?」


「っ!? わわっ、今度は急に力が開放されやがったッ!」


 次の瞬間、タックさんは見えない空気の塊に弾き飛ばされるように、バランスを崩しながら後方へ倒れ込んで尻餅をついた。


 眉を曇らせ、指で頭を掻いているタックさん。でも彼が顔を上げた直後、大きく息を呑んで瞳に焦りの色が満ちる。


「アレス、危ねぇえええええぇーっ!」


「……えっ?」


 タックさんの差し迫ったような叫び声に、ポカンとした僕はゆっくりと顔を後ろへ向けた。すると眼前には鎧の騎士が迫り、巨大な拳がこちらに向かって振り下ろされてきていることにようやく気付く。もはや回避する余裕は数秒もない。



 ――僕は鎧の騎士の強烈な一撃を食らい、意識を失った。



 BAD END 7-1

 

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