29

29


 タックさんが苦しそうな表情をしているので、僕は気遣って声をかけることにした。このまま気絶してしまったり、体調に異変が起きたりしたら大変だもんね。


 僕は力の行使を一時的に中断し、彼の方へ一歩歩み寄る。


「タックさん、大丈夫ですか?」


「っ!? わわっ、今度は急に力が開放されやがったッ!」


 次の瞬間、タックさんは見えない空気の塊に弾き飛ばされるように、バランスを崩しながら後方へ倒れ込んで尻餅をついた。


 眉を曇らせ、指で頭を掻いているタックさん。でも彼が顔を上げた直後、大きく息を呑んで瞳に焦りの色が満ちる。


「アレス、危ねぇえええええぇーっ!」


「……えっ?」


 タックさんの差し迫ったような叫び声に、ポカンとした僕はゆっくりと顔を後ろへ向けた。すると眼前には鎧の騎士が迫り、巨大な拳がこちらに向かって振り下ろされてきていることにようやく気付く。もはや回避する余裕は数秒もない。



 ――僕は鎧の騎士の強烈な一撃を食らい、意識を失った。



 BAD END 7-1

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る