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なんとしてでもタックさんを守ってみせる!
神様、どうか僕の命を削ってでもタックさんを守らせてくださいッ!
「僕は……僕はッ……タックさんを守るんだぁあああああぁーっ!」
気が付くと僕はカッと目を見開いて叫んでいた。その声はフロア中に響き渡ってこだまする。
すると次の瞬間、鎧の騎士は見えない結界にでもぶつかったかのように動きが鈍るが完全に沈黙するというところまでは至らない。僕の力不足なのか、それとも鎧の騎士の意思が強いのか。
「う……ぐ……」
僕にはもはや立っていられるだけの力は残されていなかった。その場にうつ伏せに倒れ込み、鎧の騎士がゆっくりながらもこちらへ歩み寄ってくる足音と振動を感じている。
悔しい……タックさんを守れない……。僕にもっと力があれば……。
守りたい……守りたいのに……体が言うことを聞かない……。
あぁ、僕の命を捨てでもタックさんを守りたい……ッ!
「――アレス、よくがんばったな。あとは私に任せるがよい」
その時、僕の横に立ったのはミューリエだった。チラリと視線を向けると、彼女は満足げで晴れやかな笑顔。さわやかで温かな雰囲気が溢れだしている。
直後、ミューリエは剣を抜いて構えると、勇ましい表情になって鎧の騎士へ向かって駆け出す。彼女の香水か何かのいい匂いだけが、ほのかにその場に残って霧散していく。
やがてミューリエは、鎧の騎士に接近したところで左右にステップ! 相手のパンチによる攻撃を華麗にかわし、大きく真上に向かってジャンプした。
そのまま剣を握り直し、落下する力を利用して上から下へ斬りかかるッ!
「てやぁあああああぁーっ!
光速のようにも感じられる瞬時の斬撃。剣に反射した光が軌道を描き、その場には残像の余韻が漂う。当然、技の破壊力は凄まじく、ミューリエの攻撃を食らった鎧の騎士は体が縦に真っ二つに破断して真後ろに崩れ落ちたのだった。
フロアにはその際の衝撃音と振動が響き、ガランガランという金属音とともに程なく沈黙する。あとに残されたのは瓦礫の山と立ち上る砂埃。もはや原形を留めていない。
なんとミューリエは一撃で鎧の騎士を倒してしまったのだ。
「す……すごい……。これがミューリエの剣技……」
ミューリエの姿はまるで戦の女神様のように勇ましくも美しい。僕はしばらく見とれてしまっていた。それと同時に自分の無力さに悔しさと情けなさを感じている。
でも過ぎてしまったことをクヨクヨ考えても仕方がない。大切なのはこれからだ。
僕ももっと強くなって、ミューリエやタックさん、そしてたくさんの人々を守れるようになりたい。
――この時、僕は彼女を見て思った。
NORMAL END 7-2
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