#21 サクマ式

 三時限目にも、ユウキの知り合いがいた。

 男子生徒が二名、教室の真ん中辺りの席から声をかけてきた。

 合流していい? と聞いてきたユウキに頷いて、一時限目の時みたいに二人組の後ろに並んで座った。

 今度の二人は授業中は静かなタイプらしく、特に二人を気にすることなく授業は終了した。

 俺が授業の余韻に浸っていると、ユウキが授業内容についての質問をしてきた。

 前の席の二人が自分が答えようとばかりに参加してきて、そのままちょっとした復習座談会になった。

 初めての体験だったが、なかなか楽しかった。

 そのまま、昼食も一緒に食べないか? という流れになって、四人で食堂へ行くことになった。

 

 展望の良い食堂は、セルフサービスのカフェテリアだ。

 入り口付近の注文ゾーンで希望のメニューを選択すると、出来立ての食事がトレーに乗って出てくる。

 トレーの受領と同時に料金が電子精算される仕組みだ。

 

 

「へぇ、じゃあ午前中の三時限ユウキと一緒だったんだ」

 

 

 四角い顔のヒラタが面白そうに言うと、

 

 

「ユウキ、めちゃくちゃ顔広いだろ」

 

 

 髪が長めでキノコみたいな形をしているミワが吹き出した。

 

 

「うん、一時限目でも二時限目でも、あ、三時限目でもだね、二人ずつ知り合いがいて、紹介して貰ったよ」

 

「酷い時は授業受けに来たやつ全員知ってたりするんだよ、あれは笑った」

 

 

 ミワは笑い上戸らしい。

 笑う度に髪がふわっふわっと弾んで顔全体で笑っているみたいだ。

 

 

「あれは俺もビビった」

 

「さすがのユウキ本人も驚きでしたか! でも、ユウキ、女の子には少し冷たいんだよなぁ」

 

「ヒラタ最近女の話ばっかり」

 

「え? そーなの?」

 

「そー。発情しちゃってるんだか、俺付き合いきれないよー。ユウキ、なんとかしてやって」

 

「まぁ、聞いてやろうじゃないの、ヒラタちん。思う存分話したらいいさ」

 

「ユウキ攻めてくしーっっ」

 

「話す話すわー。今はユウキの話だろ? ユウキ、女の子には一歩引くよなぁ、あれ、やっぱり警戒してるわけ? 玉の輿狙いの押し掛けちゃん」

 

「えー?」

 

「みんな目の色変えるもんな、横で見てる俺もたまに引く」

 

「ヒラタちん手厳しいね。俺は単にシャイボーイなだけっスよ。なんか照れちゃって、男みたいにガツガツ行けない」

 

「それは嘘だろー」

 

「ミワちん、本当」

 

 

 少し前のユウキとの会話を思い出して、多分それは・・・嘘だ、とミワの言葉と同じことを思った。

 ヒラタとミワを見ると、二人とも「それは嘘」と分かっているみたいで、ケラケラと笑っていた。

 少し不思議に思ってユウキを見ると、俺の視線に気づいたユウキはいたずらっぽく笑った。

 

 なるほど。

 『人は一人一人違う』、こういうことか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る