世界の十字路4~その腕は禁忌への誘い~
時雨青葉
プロローグ
彼の気まぐれ
―――退屈だ。
彼は
時おりどこかで水の滴る微かな音が反響する周囲は、広くて
この不思議な空間だけが彼の世界。
他には誰もいない。
彼はもう何十年、何百年こうしているだろう。
昔に比べて、彼を見ることができる人間は激減した。
彼の存在に
昔はそんな人間も多かったというのに、今となっては彼の存在自体を知らない人間ばかりだ。
昔のように、あえて彼に勝負を挑んでくる命知らずな変わり者もいない。
彼はすでに、人々から忘れ去られようとしている存在だった。
誰にも干渉されず、忘れられて、波風の一つも立たなくなった彼の世界。
そんな世界が、彼はただ退屈だったのだ。
「……おや?」
水晶玉に手をかざしていた彼はふと呟いた。
その水晶玉には、交差点を行き交う人々を
彼はその中に、興味深いものを見つけた。
思わず、それを食い入るように見つめる。
「……ふふ。」
自分の目が輝き、胸が高揚しているのを感じる。
こんな気分は久方ぶりだ。
彼は口の端を上げた。
―――これは、なかなか面白いことが起こる予感がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます