第十七章 あなたがいない城の中で
第1話 あなたは外を夢想する
ラッフレナンド城をすっぽり包むように広がっているラルジュ湖には、大小様々な島がある。
多くは木々が生えているだけの小島だ。水の流れの問題もあり、船での遊覧や小島への上陸は難しいのだと聞く。
しかし、王家の者の墓がある”陵墓の島”、祠が一宇ある”名も無き島”など、船で行き来して利用されている島もあるのだ。
城の西にある女性たちの”
生理が始まった城の女性達は皆この島へと渡り、白い石造りの祠で生理の終わりを待つのだ。
祠の入り口には食料庫と調理場が用意されており、外には体を濯ぐ用の湯場もある。
祠を入るとすぐに下り階段があり、下りた先には大きな広間がある。壁面に人一人が寝そべれる程度の小部屋が全部で二十個程あり、皆ここで寝泊まりするのだ。
通風孔がある為空気の通りは悪くなく、照明が多く灯されているので清潔感が漂う。
専用の掃除人もいるので、白い石畳が血で汚れたままになる事も少ないという。
一日に二度船が往復する以外に城へ戻る方法がないのを除けば、概ね女性に優しい施設と言える。
かつては王族や側女のみが利用できる施設だったらしいのだが、今はメイドや一部役人の利用も許されている。
(まあ…側女って私だけだし、ここを一人で使うのはさすがにね…)
地下の小部屋の一室で、白い貫頭衣に身を包んだリーファは壁にもたれてぼんやりしている。暇つぶし用に持ち込んだ恋愛小説を開いてはいるが、ちっとも頭に入ってこない。
リーファが腰掛けている場所には穴が空いており、ここに座って排泄物も血も落として行く。ちゃんとフタもついているので、臭いが漏れにくいのはありがたい。
(城下の
ここにいると、どうしても城下の
城下の東側にぽつんと立っている木造の小屋で、地下を降りた先は土壁がむき出しになっている穴倉だ。
中には幾つかのツボが置いてあるだけで、かがり火もロクに灯されておらず、換気も悪い。
食料は持参して過ごすのだが、あの環境で食欲がある者などそう多くは無く、皆腹痛と空腹と乾きと悪臭の中で生理が終わるのを待つのだ。
(アラン様に、相談してみようかな…)
側女が政治に関わる事は許されていないのだが、あの
祠の入り口の方で幾人かの女性の話し声は聞こえるが、内容までは聞き取れない。
うとうとと、瞼が重くなっていく感覚がある。今が一番辛い時期なので、仕方はないのだが。
このまま寝てしまうとどうしてもお尻が痛くなるのだが、うっかり血で汚してしまうよりかはマシだ。
リーファは側にあった毛布を膝にかけ、壁にもたれてうたた寝する事にした。
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