【Web版】エロゲ転生～運命に抗う金豚貴族の奮闘記～

第204話 お前誰とヤッたんだよ！

　覚醒したジークフリートを見つめるレオルドは気持ちを切り替えて分析する。

（落ち着け。ジークは覚醒したがまだ自分の力を理解出来ていないはずだ。だから、使いこなすことは難しいはず。それに腕輪もすでに限界値を迎えているに違いない。その証拠にジークの腕輪は今にも壊れそうだ。多分、あと一撃叩き込めば俺の勝ち……出来るか？　今の覚醒したジークに一撃を叩き込むことが……。いや、弱気になるな。俺なら勝てる。運命に打ち勝つならここで負けるわけにはいかねえよな！）

　剣を構えるレオルドにジークフリートは地面を蹴って近づく。先程よりも素早い動きのジークフリートにレオルドは目を見開くが対応できない速度ではない。

　レオルドはジークフリートの攻撃を回避して、剣を叩きつける。直撃したかと思われたが、ジークフリートは寸前で剣を受け止めていた。

　そのまま力で押し切ろうとしたが、跳ね返されてしまう。押し負けたレオルドは大きく後ろへと跳び、ジークフリートから距離を取る。

（ちっ……強化されてるってことは誰かとヤッたのか？　いや、この段階だとジークは誰とも結ばれてないはず……！　つまり、男友達の誰か……ロイスかフレッドあたりだな）

　そう推測するレオルドの読みは当たりである。今のジークフリートは絆の力でロイスとフレッドの力が加算されている。純粋な身体能力だけで言えばジークフリートが勝ると言ってもいい。

　ただし、それは身体能力だけだ。戦闘能力にすればレオルドに軍配が上がる。それは、技量や経験の差によるもの。ジークフリートもいくらかの経験はあるだろうがレオルドに比べれば微々たるもの。

　故にレオルドが負けることはない。

（ふう……身体能力は向こうのほうが上かな。でも、技量が上がったわけじゃないか）

　ジークフリートの力を確かめる事が出来たレオルドは勝利の算段がつく。恐らく、よっぽどのことがない限り負けることはないだろうとレオルドはジークフリートへと距離を詰める。

　レオルドが距離を詰めて間合いに入ると、ジークフリートはレオルドへと剣を振る。レオルドは迫りくる剣を避けるとジークフリートの背後へと回り込む。

　がら空きになった背中をレオルドは思いっきり殴る。拳が当たると思った瞬間、ジークフリートは身体を反転させてレオルドの拳を避け、逆に拳を叩きつける。

　だが、ジークフリートの拳が直撃することはない。レオルドは寸前で受け止めて、そのままジークフリートを背負い投げで地面に叩きつける。

「がっ……！？」

　バキンッと音を立てて腕輪が壊れる。ジークフリートの腕輪が壊れ、レオルドの勝利が確定した。

「勝者レオルド・ハーヴェスト！」

　覚醒を果たしたジークフリートとの試合は呆気なく終わった。もっと続くかと思われたが、元々ジークフリートが受けていたダメージは腕輪の限界値に近かった。だから、覚醒してもレオルドと大した勝負は出来ない。もしも、試合前に覚醒していれば話は違っていたかもしれないが、今回は遅かった上に状況が悪かった。

　仰向けに倒れて息を切らしているジークフリートはぼんやりと空を眺めている。覚醒した当初は高揚感に包まれて誰にも負けないと思ったが、呆気なく負けてしまった事にジークフリートは少なからずショックを受けていた。

　このままではダメだと。もっと、強くならなくてはいけないと拳を握りしめる。

　ジークフリートにはレオルドと違って目的などない。ならば、なぜ強さに拘るのか。

　それは、レオルドのせいだ。同い年でありながらも騎士団長に勝ってみせた、その強さに少なくともジークフリートは憧れを抱いた。

　世界最強とは言わずともせめて同年代のレオルドと同じくらいにはなりたいとジークフリートは、そう思い始めていた。

「ああ……悔しいなぁ……」

　結局、レオルドに大したダメージも与えれず敗北したジークフリートは心情をポツリと呟く。そこへレオルドが近づいていく。倒れているジークフリートへレオルドは手を差し伸べる。

「え……？」

「何を呆けている。さっさと立て。次の試合の邪魔になるぞ」

「あ、ああ！」

　言われてからジークフリートはレオルドの手を取り立ち上がる。

（む！　そう言えばジークのスキルってどこまで有効なんだ？　ゲームだったら友好度が数値化されてたから把握出来るけど、ここじゃ数値なんて見えないからな〜。もしかして、これも絆の力に判定されるのか？　握手しちゃったけど……俺の力も加算されるとやばいんですけど。いや、まあジークが強くなる分には問題ないよ？　ジークには魔王やら邪神やらと戦ってもらいたいし）

　あくまでレオルドは死亡フラグを回避するのが目的であって、魔王や邪神などの強敵は人任せである。ただし、どうしても避けられそうにない場合を考えてレオルドは鍛錬を積んでいる。

「どうかしたか？」

「いや、なんでもない」

　突然黙り込んだレオルドを不思議に思ったジークフリートは声を掛けるが、適当に誤魔化したレオルドはそのまま手を離して会場を出ていく。そのあとを追いかけるようにジークフリートも試合会場を後にした。

　控え室へと戻った二人は、互いに向き合う。

「……」

「……あー、レオルド。この後、時間あるか？」

「そうだな、とりあえず、次の試合の開始時間を確認した後でいいか？」

「ああ。それでいい」

「わかった。なら、聞いてくるから少し待っていてくれ」

　レオルドは係員に次の試合開始時間を聞いてからジークフリートの下へと戻る。

「どうだった？」

「悪いな。すぐに準決勝らしい。それが終われば今日の試合は終わりだから、その後でもいいか？」

「全然構わない。終わったらクラリスと一緒にお前のところに行くよ」

「わかった。試合が終わったら控室で待っていよう」

　そう約束した二人は別れる。ジークフリートは負けたので、友達が待っている貴賓席へと戻っていく。そして、レオルドは次の試合に備えて少し休むことにした。