第58話 決戦2
オークキングとの決戦。
苦戦を強いられている冒険者たち。
その状況を見たレティシアは、自らも戦いに参加することを決意する。
……しかし。
彼女は、魔法の才能は桁違いだが……戦闘の経験など全く無い完全な素人だ。
下手に手を出せば冒険者たちの連携を乱し、むしろ足を引っ張りかねない。
それはレティシア自身にも良く分かっている事だ。
それでも……この状況で手を拱いているだけなのは我慢ならなかった。
「エリーシャ……皆に加勢出来ない?私も魔法で支援する」
「お嬢様……ですけど……!」
レティシアの護衛に徹してるエリーシャも、冒険者たちが苦戦する様子を見て焦っていた。
しかし彼女はあくまでもレティシアを護るのが役目。
不用意に主の元を離れる選択は取れないでいるのだった。
彼女たちがこうして悩んでいる間にも、戦いは続いている。
少なくないダメージを負った前衛二人は、どうにか体勢を立て直して戦線に復帰している。
しかし、やはり先程までと比べれば動きの精彩を欠いているようだ。
中衛後衛のサポートによってどうにか抑えている状態。
一方のオークキング達といえば……開戦当初こそ早々と駒を失ったものの、今は互角以上に冒険者たちと渡り合っている。
「あの強さ、指揮能力……もしかしたら、キングじゃなくてエンペラーかも……」
「オーク……エンペラー?」
「はい。キングをも遥かに凌駕する能力と、他種族さえ従える支配力を持った……脅威度Sランクの魔物です。放っておけばどんどん配下を増やして……
それを聞いたレティシアは、ついに決断を下す。
「戦おう。私達も……!今ならまだ、巻き返せるよ!」
「お嬢様……分かりました!!私は前衛に加わります!!」
「うん!お願いね、エリーシャ!!」
レティシアの願いを聞き入れ、エリーシャも覚悟を決める。
そして、一気に飛び出して……
「加勢します!!はぁーーーっっ!!!」
前衛二人の間に飛び込んで、渾身の一撃をハイオークに叩き込んだ!!
『プギャッッ!!!?』
突然割り込んできたエリーシャに反応が遅れたハイオークは、まともに唐竹の斬撃をまともに頭に食らう。
それは
「エリーシャか!!助かったぞ!!」
「嬢ちゃんの護りは!?」
「攻撃こそ最大の防御ですっ!!一気に畳み掛けましょう!!」
男たちを鼓舞するエリーシャ。
彼女の参戦によって……更にはハイオークを一体撃破したことにより、敵味方の前衛の数的優位が逆転する。
(……何気に後ろのオークメイジの支援が鬱陶しいね。私はあいつらを……!)
それほど強力な魔法は使ってこないようだが、こちらの連携を寸断するような嫌らしいタイミングで攻撃してくる。
メイジを何とかすれば、勢いに乗れる……そう考えたレティシアは素早く魔力を制御して……
「[[雷龍]]!!」
雷撃の上級魔法を放った!!
「ら、雷龍!?二体同時に!?しかも無詠唱って!?」
思いがけず高度な魔法……しかもそれが無詠唱で放たれた事に驚愕の声を上げるロミナ。
レティシアが優れた魔法の才能を持っていることは分かっていたが、それはロミナの想像を遥かに超えたものだった。
レティシアの魔法によって生み出された雷撃の龍は、左右に分かれて戦いの場を迂回し……後衛のオークメイジに襲いかかる!!
(これなら皆の連携を乱すこともないでしょ!!)
そして狙い違わず、雷龍たちはオークメイジ2匹に食らいつく!!
バリバリバリッッッ!!!!
『『グギャアーーーーッッ!!??』』
オークメイジの全身を強烈な電撃が駆け巡り、瞬時に絶命させる!
そして尚も健在な二体の雷龍は、残るもう一体のオークメイジにも襲いかかりこれを撃破!
三体いたオークメイジは瞬く間に全滅するのであった。
そして、オークメイジの魔法による支援が無くなった事で、前衛三人の連携が機能し始める。
そうなると一気に戦況は冒険者たちに傾き、程なくハイオーク二体を撃破する。
エリーシャとレティシアの参戦によって形成が逆転した冒険者たち。
あとはオークキング……いや、オークエンペラーただ一体を残すのみとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます