002 お約束?
気がつくと、俺は硬い石の床の上に倒れていた。気づくと、反射的に左目の方に手をやる。痛くもなければ、
となると、ここは死後の世界。
「気がついたか」
目の前に小柄な老人が座っている。禿頭、白く長いひげ、ゆったりとした
「山の老人?美女はどこ?」
「誰が山の老人じゃ。そもそも、お主は暗殺とか、ゲーム世界でしかしてないじゃろ」
ボケにすかざすツッコミをいれてくるとは、やるなっ、この老人。
「まぁ、ちょっと聞きなさい」から老人の話が始まる。
うちの学校の校長先生も、剣道のえらい先生もそうだったけど、おじいちゃんはちょっと話が長い。
おじいちゃんの話を要約すると次のようになる。
1つ、おじいちゃんは神さま的な存在。
2つ、死んだかどうかはどうでも良いことで大切なのは別世界に送られるということ。
3つ、別世界に送られる際に、いくつかの特殊な
4つ、別世界から元の世界に戻る方法もなきにしもあらずだが、それはひ・み・つ。
ひ・み・つって言い方が大変むかつく感じだったが、俺は拳を握りしめて耐えた。
「別世界の食べ物を食べても、元の世界に戻れないなんてことはないから、思う存分食生活他楽しむが良いぞ」
おじいちゃんはいかめしく宣言する。さっき、両手をくねくねさせて、ひ・み・つって言ってたくせに何を今更。
「それで、
「うん、そういうものもあるじゃろ。何が当たるかはこれから決まるのじゃ」
「男の子の夢きたー。ずっと俺のターン!」
「うむうむ。お主の夢、存分に
おじいちゃんの声に呼応するかのように
「これで、お主の運命が決まるのじゃ」
おい、ダーツで決めるのかよ。
俺は円盤に浮かび上がる文字に目を
1 タワシ
2 タワシ
3
4 タワシ
5
6
7 タワシ
8
9
10
11
12
「超レアスキルも混じっておる。お前が欲しがってる異性を魅了するスキルもある。魔法使いにだってなれるかもしれないぞ。お主は運がいいじゃろ。さっ、投げるんじゃ」
「ちょっとだけ、うかがいたいんですが。格好良さそうなのに混じって、
「タワシは、1日1つ、無からタワシを生じさせるスキルじゃ。掃除夫になったときに、あって良かったと思う可能性もなきにしもあらずなのじゃ。
軽くめまいがした。タワシは4つ。3回投げて、タワシが1つも入ってこない確率は低い。タワシを引かなくても不穏な名称のスキルは今聞いた2つ以外にもある。
「さっ、投げるんじゃ。投げないんだったら、ダーツは没収なのじゃ」
おじいちゃんはやけに急かしてくる。ええい、悩んでいてもしょうがない。ダーツをかまえる。
「タ・ワ・シ!タ・ワ・シ!タ・ワ・シ!」おじいちゃんのコールが響く。
このクソジジイ……。
一投目。5番。
「
〈嬉しいけど、嬉しくねー〉
「タ・ワ・シ!タ・ワ・シ!タ・ワ・シ!」おじいちゃんいいかげんにしろよ。
二投目。6番。
「6
〈転送先は物騒な世界かよ〉
「タ・ワ・シ!タ・ワ・シ!タ・ワ・シ!」くそじじいが叫ぶ。タワシにこだわってんじゃねーよ。
三投目。7番。5番、6番、7番……ダーツ投げてんのに連番になってんじゃねーよ。そして、最後の最後でタワシ引いてしまった。それにしても、なんで、このスキルだけルビついてないんだよ!
「タワシきたー。タワシきたのじゃー。そんな
満面の笑みを浮かべるおじいちゃん。
「大丈夫…なわけないじゃないですかっ!問題おおありですよっ!」
「それも運命なのじゃ。楽しいニューゲーム+を楽しむんじゃよ。ちなみに応募者全員サービスで多少の身体能力強化は施してあるから、都会のもやしっ子でも安心じゃよ。向こうの世界の言語も話せるようにしておくからバイリンガルになってモテモテライフを送るんじゃよ」
ニューゲーム+ってゲームクリア後に強いままやりなおせるやつだろ。ゲームオーバーで微妙スキル持たされるのをニューゲーム+って呼ばないからっ!ていうか、都会のもやしっ子ってなんだよ、否定出来ないけどさ。
自分の体が光り輝き消えていく中、俺のツッコミはおじいちゃんには届かなかった。ほしかったなぁ、
獲得スキル
戦闘スキル
戦闘スキル
日常スキル タワシ
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