第3話 冒険者ギルドに行ってみる


 早朝から、僕は冒険者ギルドに向かい始めていた。

 今日からは、自分でダンジョンをクリアし、生きていくために必要なお金を稼がなければいけない。

 そう昨日自分の中で決め、張り切って今日を迎えた。……のだが、そんなにうまくいくわけがなかった。

 冒険者ギルドに到着すると、中からは生涯一生聴きたくない人の声が聞こえた。


「よぉ! レドルンド! 珍しいなぁ。こんな朝早くから」

「あぁ。なんだかモチベが高くてなぁ」

「あの邪魔者がいなくなったからじゃねぇか?」

「そうかもな! がっはっは」


 レドルンドは、朝にも関わらず大きな声で笑っていた。


「最悪だ」


 僕は、小声でそう口に出し一旦その場を離れた。

 

 なんで今日に限って、早朝からレドルンドたちがいるんだ!

 僕がパーティーに入っていた頃から、レドルンドは朝が得意ではなかったので早朝からダンジョンに行くなんて事はあり得なかった。

 だから、今日も朝早く行くことにした。


「しょうがない。レドルンドたちがダンジョンに行くまでここで待機していよう」


 流石にあの遠い家に今から帰るわけには行かない。一度家に帰ってしまえば、おそらくめんどくさくなって明日で良いって思ってしまうだろう。

 早朝からレドルンドがいる事で、かなりモチベーションが落ちてしまったが、今日やると決めたからにはやるしかない。


 それにしても、あのレドルンドが早朝からダンジョンに行くほどモチベーションが上がるとは。

 僕のことがどれほど嫌いだったかがわかる。

 もちろん、たくさん迷惑をかけてきたと言う自覚はあるが僕なりに尽くしてきたつもりだったし、何より迷惑をかけていたのは僕だけではないはず。

 メンバー同士で助け合っていくためのパーティーなんじゃないのか?


「はぁ……」


 ここでなんと言おうとレドルンドには伝わらない。もう掘り返すのはやめよう。

 僕は一人で生きていくって決めたのだから。


 そんな事を考えていると、建物の隅からレドルンドたちがダンジョンに向かう姿が見えた。

 しっかりとレドルンドが姿を消すまで見張った後、僕はこっそりと冒険者ギルドに入った。


 ――――――――――――


 冒険者ギルドとは、冒険者がダンジョンにいくための受け付け場のようなものになっている。

 ここでは、冒険者として登録してもらう事でダンジョンを探索する権利が与えられる。

 そう言った理由で、駆け出しの冒険者から上級者まで、大体の冒険者はここを使う。

 僕みたいな一部を除いてだが。


 僕は、無理矢理パーティーに入れてもらっていたので、レドルンドが雇っていると言う形になっていた。

 今までは、僕の名義ではなくレドルンドの名義でダンジョンに潜っていたため、一人で行くにはまず冒険者登録をしないといけなかった。


 僕は重い足を上げ、受け付けのお姉さんに声をかけた。


「す、すいません。冒険者登録をしたいんですけど……」

「冒険者登録ですね。少々お待ちください」


 そうゆうと受け付けのお姉さんは、何かを持ってくるのか裏の方に行ってしまった。

 何をすれば良いのかわからない時間ができてしまい、周りをキョロキョロとしていると一人の冒険者が僕のことを指差して大声で話し始めた。


「え! あれ、昨日パーティー追放されてたやつじゃね?」

「たしかに。どっかで見たことあるなと思ってたんだよ!」

「キャーーー! そいつ透視スキルで服を透かしてみれるやつじゃないの?!」


 最悪だ。

 女冒険者は、悲鳴を上げながら冒険者ギルドを出て行ってしまった。

 他の男冒険者たちは、僕の方を見ながら小声で笑ったり陰口を言っている。

 耳元で喋れば聞こえないと思っているのだろうか。


 ただ、周りの冒険者はどうでもいい。それより問題なのは受け付けのお姉さんに知られてしまう事だ。

 もし知られてしまって、冒険者登録をしてもらうことが出来なければ元も子もない。


「なんとか説得しないと……」


 すると、裏から受け付けのお姉さんが戻ってきた。

 こちらの様子には気づいてないようで、普通に冒険者カードを出し説明をし始めた。


「お待たせしました。 こちらカードに……」

「ありがとうございます!」


 その瞬間、僕は前に出されたカードを取ってすぐに冒険者ギルドから逃げた。


「なんとか……。貰えた……」


 先程いた建物の隅に隠れ、もらったカードを確認する。

 だが、そこには何も書いていない空欄のカードしかなかった。


「え……。嘘だろ……」


 すると、持っていた方の手に魔法陣のような光が表示され、僕の名前や年齢などが勝手に記入された。

 どうやら、指紋で名前などの情報を調べることができる魔法らしい。


「よ、よかった」


 僕は、名前が表示されたカードを見てホッとした。

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