114.始めます

114

「オリビエ、こっちの準備はOKよ」

「ありがとうカメリア。こっちも大丈夫よ」

今日からテラス席を開始する

一気に12席増えるだけにどうなるかはまだわからない


「ジョン、ハリー、ウーもありがとう!」

「何とかなるもんだな」

「思ってたよりいい出来だ。これで花も売れてくれりゃ儲けもんだ」

「ふふ…そのためにウーも花を育て始めたんでしょう?」

「そうだよ。野菜も楽しいけど花も奥が深くて楽しい」

ウーは興奮しながら言った


「ミュゲが鉢植えをたくさん作ってたぞ」

「そうなの?」

「ああ。あれならミュゲの鉢に花植えて、そのまま売ってもいいかもな」

「そういえば鉢植えで売ってるのはあまり見かけないよね?植木とか切り花はよく見るけど」

「鉢自体そんなに売ってないからじゃないか?」

なるほど

それなら鉢植えとして売るのも無理か


「でも私は切り花くらいが丁度いいわ。長く育てる自信はないもの」

「ならミュゲには色んな花瓶も作ってもらってもいいかもね」

「それはいいわね。花瓶があれば花を買いたくなるし」

「今日ミュゲが来たら言っとくよ」

仲間内でコラボするのは皆好きらしくて、この手の話が出るとすぐに持って行く

そして、少ししたら実現してることが多い

彼らのフットワークの軽さとバイタリティは素晴らしい


「オリビエ、ひょっとしてテラス席は今日から?」

「そうなの。是非使ってね」

「もちろんよ!この隙間から見る限りとても素敵な空間だもの」

来店時はいつも開店5分前に足を運ぶ彼女はテラス席第1号だと、その喜びを隠そうともしない


「アニー達からそのうち出来るとは聞いてたが…開放的で気持ちいいな」

「俺達は声もデカいからな。店内よりこっちの方が気が楽だ」

そんなことを言ってくるのは騎士達だ


「私はこの甘い香りに包まれるのが好きだから店内の方がいいわ」

「私も。ケースに並んだケーキを眺めながら食べるのがいいのよね」

エメルとマーシェリーはテラス席よりもこれまで通り店内で楽しみそうだ


「ごめんなさい。子ども達が芝生の上で走り回っちゃって…」

「構わん。子どもが走り回ったくらいでどうこうなる作りにはしてないからな。坊主たちも好きなだけ楽しんで行け」

「うん!」

「ありがとう!」

言い切ったジョンに子供達が嬉しそうに頷いてまた走り出す

因みに迷宮産の芝で根付くのが早いだけでなく、そのまま広がっていくのに手入れを殆ど必要としない優れものだ

どういう仕組みになってるかはジョンもわからないという

広がり方をコントロールするためにも、絶対解明してやると意気込んではいるけどね


「並んでる間にも花が楽しめるのはいいわよね」

「どうせなら買って帰りたいくらいだけど」

「希望のものがあったら売るよ?」

ウーが声をかける


「そうなの?」

「うん。欲しいのを必要なだけその場で切るよ」

「それはいいわね。じゃぁ食事が終わってからお願いしようかしら」

「でもどうしてこんな売り方を?」

「花の命が短いからだよ。今までは朝のうちに切って水に浸けて売ってたけど、残ったのはどうすることも出来なかったから」

ウーは苦笑しながら言う


「ドライフラワーや押し花にして、出来るだけ捨てないようにしてたけど、どうしてもロスも多かったんだ」

「たしかにそうよね…花屋さんでもよく捨ててるの見るもの」

「だからこうすることで捨てるのが減ればいいなって。それにもう少ししたら鉢植えでも売り出す予定だよ」

「鉢植えで?」

「うん。雑貨コーナーに陶器の食器置いてる人が、鉢植えや花瓶も作る予定だから」

「花瓶も?」

話してたのとは別の女性が割り込んで来た


「ま、まだ少し先になるだろうけど売る予定はしてるよ」

「それは楽しみだわ」

ウーは彼女が満足げに頷くのを見て、ミュゲに早く作ってと伝えることにした


****


「って感じで結構いい感じだったよ」

ウーが雑貨コーナーでの事を満足げに話す


「テラス席の前の芝も坊主たちが喜んで走り回ってたぞ。店内だとじっとしてなきゃならんが、それがないから親の方も楽しそうだった」

「トレリス付きのプランターが欲しいと言ってるお客さんもいたわ」

「何?」

ハリーが唖然としていた


「テラス席のお陰で雑貨コーナーの方が繁盛しそうね」

「言えてる。花もたくさん売れたしね」

「自分で切れるって言うのがいいのかしらね?みんなじっくり見比べて切ってたわよ」

カメリアもクスクス笑いながら言う

何にしてもテラス席は色んな意味で受け入れられたようでホッとした

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