81-2
モーヴはダビアとマロニアだけを残し人払いした
2人の猿轡を外してその顔を見据える
「さて、この愚息はオリビエに対峙したらしいな」
「そ…れがどうした」
オナグルはモーヴを睨みつけて吐き捨てるように言った
「オリビエは召喚された者だ。その者に対する行いとしては最低だな」
「バカバカしい。召喚したのは歌姫だ。あの女は勝手についてきただ…ぅぁあああ!!」
モーヴはオナグルが言い終わらないうちにナイフを投げていた
それが見事に腕のあった場所に刺さる
「すげ…全然見えなかったぞ?」
ダビアが思わずつぶやいていた
「本当に救いようのない親子だな?俺の妹を殺し、その家族も殺させた。それだけでは飽き足らず召喚されたオリビエと、俺の甥がいる町を襲うとは…」
「…な…んの事かわからん…俺は知らん!」
否定するナルシスにモーヴは1枚の写真を見せる
「あ…」
それは以前ロキが手にしていた写真だった
「ここに映ってる封筒にはお前の蝋封がしてあった」
「!!」
「知らぬと思ったか?誤魔化せると本気で思っていたのか?」
威圧の籠った言葉にナルシスは必死で首を横に振る
「安心しろ。貴様らを簡単に殺したりはせん。殺してくれと乞いたくなる裁きを用意してやるから楽しみにしてるがいい」
「…今のは?」
魔力の動きを感じてマロニエが訊ねた
「自害できなくする魔術だ。こいつらのしてきたことは簡単に死んで済ませられるようなことじゃないからな」
その冷たい声にダビアとマロニエは珍しく恐怖を覚えた
「これは持って帰らせてもらう。そなた達に頼みがある」
「何なりと」
「オリビエが傷を負ったと聞いた。万が一等考えたくないが…クロキュスを頼む」
2人の頭の中には先ほどの姿が浮かんでいた
かつて2つ名で呼ばれていた頃の姿が…
「俺たちにとっても2人は大事な人間です」
「…そうか」
ダビアの言葉に頷いてからモーヴは2つの牢と共に転移で帰って行った
「昔のクロキュスよりおっかねぇな」
「流石、王って感じ」
呟きながら歩きはじめる
「オリビエが心配だな」
その言葉に足が速くなる
屋敷に駆け込むと皆がロキたちの部屋の前にいた
「オリビエは?」
ダビアの言葉にシュロが首を横に振る
「解毒は出来たらしいが意識が戻らない。フロックスとクロキュスがついてる」
「そう…か…」
「…散々助けて貰ったのに祈るしか出来ないなんて…」
カメリアが泣き崩れると子供たちまで泣き出した
オリビエはそのまま夜が明けても目を覚まさなかった
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