8-4

初めて見るものが並ぶと初対面でも話題に事欠くことが無い

最初戸惑っていたカメリアも、途中からは落ち着いたようだった

大皿に盛られた料理もどんどん減っていくのが嬉しい


「オリビエ様」

「なーに?コルザ」

「シチューのおかわりはある?」

「あるわよ。たくさん食べてね」

そう言った途端目の前にスープボールが差し出された


「くれ」

視線をやるとロキがそう言った

私は苦笑しながらスープボールを受け取った


「オリビエ様、このとろみはどうやってつけるのでしょう?」

カメリアの質問にロキがミルクスープの話をしていたのを思い出す


「小麦粉を使うのよ。とろみがある方が冷めにくいから寒い時期にはいいのよね」

「小麦粉をスープに…ですか…?」

「ええ。カメリアが料理に興味があるなら今度一緒に作りましょうか」

「いいのですか?」

「もちろん。その代わりにカメリアが普段作る料理も教えてほしいわ」

この世界の料理を知るにはそれが一番手っ取り早い


「私が作る料理はお金のかからない粗末なものばかりですよ?お役に立てるとは…」

「それは実際に教えてもらってから考えるわ。どんな情報でもどこかで役に立つものでしょう?」

「…オリビエ様がそれでいいなら…」

カメリアは苦笑しながらそう言った

切り詰めた生活をしている人のレシピを参考にするのは原価を抑えるのにとても役に立つ

それが思わぬメニューになることがあると元の世界で身を持って知った


「おかわりー」

ロベリが声を張り上げた

「あら嬉しい。ちょっと待ってね」

「オリビエ様私が」

席を立とうとしたところカメリアに止められた


「住む場所も食事も提供していただけるんですからこれくらいはさせてください」

「…じゃぁお願いするわ」

「俺らも出来ることは何でも言ってください。でないと逆に申し訳ない」

与えられるだけでは逆に不安になるということだろうか

それなら素直に任せた方がよさそうだ

人柄的にもいい人たちを捕まえることが出来たみたいで嬉しい


「わかったわ。その時は遠慮なくお願いさせてもらうわね」

私がそう言って微笑んで見せるとジョンとウーはホッとしたような顔をした


「そうだ、食べられないものがあれば先に聞いておかないと」

「俺らは食えんもんはないな。といってもそれほど沢山の物を食べたこともないが」

「私たちも大丈夫です」

「何でも食べる!」

「僕も」

コルザとロベルは得意げに言う


「なら安心ね」

アレルギーなんかを気にせず作れるなら楽でいい


大勢での賑やかな晩餐は笑い声に包まれながら続いた

その中で私の事を様付で呼ぶのをやめるようお願いしたのは言うまでもない

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