第17話
「じゃあ、僕は友達と遊びに行ってくるね?」
「はい、行ってらっしゃい」
「夕飯前には帰ると思うから。あ、でも遅くなる時は連絡するね」
「はい、分かりました」
さて、今日は約束していた二人でお出かけをする日だ。
花蓮にも事前に行くことは伝えていたから、今日の朝はスムーズに行けた。
花蓮に、友達と遊びに行くって言った時は、見たことないほどの綺麗な彫刻のような笑顔で了解してくれたので良かった。
家を出て、桜木さんの最寄りの駅へ向かう。
待ち合わせ場所付近を探すと、待ち合わせ時間三十分前にも関わらずそわそわとしている桜木さんを見つけた。
「桜木さん、遅くなってすみません」
「わ、私が早く来ちゃっただけだから。謝らないで」
こんなに早く来てくれたってことは、楽しみにしてくれたってことかな?そうだと嬉しいんだけれど。
「じゃ、じゃあいこっか」
二人並んで歩き始めるが、休日で男女二人が出掛けるって.......まるで、デートのようなシチュエーションに今更ながらドキドキする。
桜木さんは、そんなことないのだろうか。
そう思って、ちらっと顔を見ると顔を真っ赤にして手で仰いでいる。
「あ、あのさ。映画楽しみだね」
「う、うん」
何とも言えない距離感で、歩き数分で映画館に着いた。
予め見る映画は決まっていたので、スムーズに事が進む。
「あ、あの夕顔君」
「なに?」
「い、一緒にポップコーン食べない?私一人だと食べきれないし」
「うん、いいよ」
「キャラメルでいいかな?」
「うん、いいよ」
キャラメルとは、桜木さんやるね。
ポップコーンと二人分のジュースを運び後は映画が始まるのを待つだけとなった。
「き、緊張する」
「緊張って、映画見るのに緊張なんてしないよ」
顔を赤らめてもじもじとしている。
そして、数分後映画が始まりお決まりの注意喚起が流れてから始まった。
どうやら、どこにでもいる主人公と癌のステージ4のヒロインとの物語だった。
序盤から話に引き込まれて、映画に熱中してしまう。
ど、どうするんだろう。
その時.....
僕の手に、そっと桜木さんの手が触れる。
数秒固まってしまったが…これって、えぇっ.....映画の内容が頭から飛ぶ。
桜木さんの方を見るけれど、暗くてよく見えないし。
もしかして、緊張するって僕の手を握るから緊張するって言っていたのかな?そ、そう思うと僕も緊張してくるし、恥ずかしくなってくる。
それ以降の映画の内容はあんまり分からなかったけれど、映画が終わって明かりがつくと桜木さんは顔を真っ赤にして俯きながらも僕の手を握っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます