第8話 セルリアの涙…

 俺は家に帰り、食事をしてからしばらくゆっくりしていると…呼び鈴が鳴ってセルリアが来た。

 俺はセルリアに上がる様に言ってから、居間に行くと…兄妹達がセルリアを歓迎していた。

 セルリアは姉や妹達と仲が良い…らしい。

 その辺の記憶が曖昧でハッキリとした事が言えないからだ。

 最初は他愛無い話をしていたのだが、本格的な話がしたくなってセルリアを部屋に誘おうとすると、俺の双子の妹の朔姫に一緒にいて貰う事が出来ないかと言っていた。


 「セルリア悪い…真面目な話があるんだ。 朔姫は今回は…」

 「でもさぁ兄貴…以前セルリアに何をしたか忘れた訳じゃないよね?」


 妹にこれを言われるという事は、家族全員がセルリアを襲ったという話が伝わっているのだろう。

 これ…毎回毎回面倒なんだけど、異世界召喚の話を家族にしているのかが謎で迂闊に話が出来ない事だ。

 今回は更に幼馴染のセルリアにも話しているかどうかが怪しい?

 俺の性格上を考えると…多分話していないだろう。

 何でも言い合える仲…何だろうけど、多分話してはいない筈。


 「今回だけは本当に重要な話なんだ、セルリア頼む!」

 「話ならこの場で話しなさい! 私達が聞かれて困るような話なの?」

 「正直に言うとな。 頭がおかしいと思われるかもしれない話なんでね。」

 「家族を拒んで私だけって…どう考えても怪しいと疑われても仕方ないでしょ!」

 「今度だけは本当に重要な話なんだ。 頼む、信じてくれ!」

 「そう言われても…」


 このままだと埒が明かないな。

 セルリアは俺がどんなに頼んでも信じてはくれないみたいだしな。


 「仕方ないか…セルリア今日はもう良いよ。 姉さんたちゴメン、俺ちょっと学校に行って来る!」

 「こんな時間にか? 忘れ物でもしたのか?」

 「屋上にな…5人の内、俺だけが発見された場所なんだろ?」

 「なっ! あそこがどういう場所か解っているでしょ⁉」

 「だが、話が出来ないのなら行って確かめるしかないからな。 大丈夫だ、多分何も起こらないから。」

 「駄目よ、やめて朔夜!」

 

 俺は立ち上がると、支度をする為に部屋に戻った。

 そして一応制服に着替えてから居間にいる兄妹達に出掛ける事を伝えると、セルリアが決心した様な顔で言った。


 「解ったわ! 朔夜と話をします。」

 

 俺も卑怯な手だというのは解っていたが、こうまでしないとセルリアとは話が出来ないと思っていた。

 そして俺はセルリアと部屋に入り、セルリアは俺のベッドに腰掛けた。

 これから始まるセルリアとの保健体育スペシャル‼

 …というのは無しで、純粋に話をするだけなのだが…廊下で聞き耳を立てている兄妹に気付いたので鍵を閉めた。

 そして更にドアに段ボールを張ってから隙間をテープで止めた。

 これで防音効果は完全…ではないがある程度は防げる筈?


 「なんか厳重だけど…本当に何もしないわよね?」

 「しないよ…あまりしつこいと誘っていると勘違いするぞ!」

 「わかった…もう言わない。 それで、私に聞きたい事って何?」

 

 まずは…俺がセルリアに異世界召喚の話をしているかどうかを聞いてみようと思った。


 「俺が正義達と屋上で消えてから見付かるまでの数日間は、何処で何をしていたか話したっけ?」

 「それは朔夜が教えてくれなかったじゃない! 話すまで待ってろって…」


 異世界召喚時の話をしてないか…。

 だとすると、過去に異世界召喚した話もしてないか?

 いや…そもそも、セルリアならその話を知っていてもおかしくはない筈?

 だって、実際に向こうで会っている訳だから…あ、正義だけは会わせてないか。

 話しても良いのだろうか?


 「今から話すのは本当の話だ。 俺は屋上で急に地面に魔法陣が現れて…気が付くとこことは違う世界に飛ばされていた。 俺の周りには、正義も悠斗も美紅も真美もいた。」

 

 セルリアは首を傾げると、俺の本棚から1冊の本を取り出して言った。


 「その話って、朔夜が好きなラノベの異世界召喚の話? その話を裏付ける根拠ってあるの?」

 「現に…俺だけで4人は帰って来てないだろ?」

 「それは…そうだけど。」

 「更に向こうでは…セルリアそっくりの女性にも会った。 俺は向こうの世界で四魔王の内…三魔王を倒してから真の魔王にこの世界に帰還させられた。 その時の同伴者が、セルリアだった。」

 「その話を私に信じろと? それに向こうの世界から一緒に来た私は何処にいるのよ?」

 

 まぁ…傍から聞いていればそうなるよな。

 さて…問題はこの後だな。

 言葉選びを間違えると、セルリアは多分泣くだろう。

 だって、異世界から帰って来た時に姉さんや妹にこの話をした時に泣いた事があったからな。

 話しても平気だろうか?


 「実はな…屋上で正義達と異世界召喚にされる前は、俺の幼馴染に元々セルリアという女はいなかった。 この世界に戻って来てからお前が幼馴染という事を知ったんだ。 それに、以前部屋に呼んでから…押し倒したり、言葉よりも体に聞くと言った事をした記憶が全くないんだよ!」

 「ひ…酷い! そんな事を言うなんて…あんまりだわ‼」

 「解っている…俺も結構酷い事を言っているという自覚はある! だが、他にも…セルリアに確認させて欲しい事があるんだ。」

 「な…なによ?」

 「服を脱がして…裸を見て良いか?」

 「それの答えに、はい良いですよ…何て答えると思う?」

 「向こうの世界のセルリアには、左脇腹と右足の内側の太腿に大きな傷があった。 それを確認しいたいんだ。」

 「そんな傷…ある訳ないでしょ! それに向こうの私をどうやって確認したのよ?」

 「一緒に風呂に入った時に確認した。」

 

 セルリアは顔を真っ赤にしていた。

 怒っているのか、恥ずかしがっているのかが解らない程に…。

 セルリアは外にいる兄妹達に助けを呼ぶ為に声を上げようとしていたので、俺はセルリアの口を手で塞いでからベッドに押し倒して服のボタンに手を掛けた。

 セルリアは必死になって抵抗していたのだが、しばらくすると大人しくなった。

 その隙にボタンを全て外してからシャツを開いて脇腹を見るが、傷は見当たらず…更にパンツのフックを外して脱がしてみるが足を閉じていて確認が出来なかった。

 俺は力の限り足を開いてから太腿を見たが、やはり怪我は見当たらなかった。

 セルリアは顔を背けて涙を流していた。

 俺は自分のやった酷い事にようやく気付いて、服を着る様に言うと…セルリアは服を着てから俺の頬を叩いてから部屋から出て行った。

 更に厄介な事に…あのセルリアの姿を下にいた兄妹達に見付かったので、階段を駆け上がる音がした。

 俺は部屋の鍵を掛けてから少しやり過ごしいて居る間に、ベランダから屋根に上がって…アポーズという魔法で玄関にある靴を呼び寄せてから履いて家から離れた。


 「セルリアは…謝ったくらいで許してくれるかな?」


 俺は学校に向かって走っていた。

 だが、俺も気が動転していて気付いてはいなかった。

 俺の背後にいる人影が追って来た事に………

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