第29話 ペーズの記憶


「な、なるほど」


 一気にその場がシーンとした。


「魔法とは、想像するものを全て現実世界に実現できる」


 イズがそう呟くと、カナが閃いたような顔をした。


「そうだよ! 国民の人が一気に目を覚ましたのって!」


 その瞬間、警備員の男の謎だった魔法が理解できた。


「じゃあ、あの男は想像するものを全て現実世界に実現できる魔法が使えるってことか?」


「細かく言うと、想像するものを全て現実世界に実現できるほど魔法が使いこなせてるって事だね」


 ペーズがそう言うと、3人が一斉にペーズの方に振り向く。


「な、何か知っているんですか?」


 ダイスがそう言うと、ペーズが答える。


「死んだ時の記憶が残ってるからね。さすが死んだ後の記憶はないけど生き返った時と死んだ時の記憶が無理矢理繋げられてる状態なんだよね」


 3人は呆然とした。死んだ時の記憶が聞けるのも、あの警備員の何かしらの仕業なのかもしれない。元々は本を求めてここに来たが、ペーズさんの記憶の方がもっと有益な情報であることに気づいた。


「その、生き返る時って何か感じるみたいなものとかってあったんですか?」


「うーん……。特にはなかったかな。ただ、だんだんと力が戻ってくる感じが続いただけだったな」


「記憶が無理やり繋がってるってどうゆう感じなんですか?」


「うーん……。記憶喪失が一番近いかな」


「なるほど」


 想像以上の質問にだんだんとペーズは困り始めていた。普段聞くことができない話が故に、興奮してしまいその場はペーズへの質問会と化していた。


 本来の目的を思い出した3人は、ペーズにある頼み事をした。


「この手品師の話が、本物だと言われているのは師匠の家計が今も続いてるからですよね」


 ダイスは本に書いてあることをそのまま読んだ。


「うん。今、自称している男が完璧な家計であるかの証明はされてないけど、古くからあるその人の家から昔の手品の道具がたくさん見つかっているんだ」


「それなら! その人に会いに行きたいです。どこにいるか教えてください!」


 ダイスが声を張ってお願いした。


「いいけど、かなり遠い場所だけど大丈夫?」


 俺たちには、カナの身体強化の魔法があるので大丈夫だと確信した。


「場所は、ここから3つ隣りの国の近くにある森の中だよ。だけど、広くてまだ全てを回ることができていない森だから地図がない。だから、そこからは自力で探さないといけない」


 すると、イズが慌てながら言う。


「も、森の中は魔物がたくさんいてとても危険です! 平坦な場所の魔物とは違い、木を使って素早く移動する魔物がいて、倒すどころか見つけることさえ出来ずにやられてしまっているパーティーがたくさんあるんですよ!」


 ペーズは、イズの話を聞き頷きながら言う。


「その通り。森の魔物は本当に危険。ある程度の実力と方向感覚、瞬発力や臨機応変な対応。この全てが備わっている人でも壊滅しているパーティーが沢山ある」


「正直なところ、僕は君たちに森を耐え抜くことが出来るとは思えない」

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