泡と淡水魚

主道 学

第1話

 海の家で三日も経った。

 真夏の日差しが今日も鋭く肌を焼く。

 私は妹の由比にアルバイトに誘われていた。


「海の家は狭いけどお客は割と来るんだよ」


 一歳年下の由比は高校二年生。

 私は高校生活最後のアルバイトは海や山の見えるところがよかった。即座に首を縦に振ると、どうしてかは自分でも解らないけど、寂しさや鬱屈が薄らいだ。

 私立春日大付属高校での生活は、いつも授業も部活も単調で退屈だったからだろうか?

 それとも、彼氏が交通事故で亡くなってしまったからだろうか?

 それとも……。




 学校から30キロ離れた沖縄の海の浜辺では、大学生の男性たちがサーフィンをしていた。

 ここには年がら年中風通しのよいボロボロの木枠が外へと通じる。冬は誰も来ないから真夏には打ってつけなのだろう。


「お姉ちゃん。お客の相手は私がやる……」


 妹は要領がとてもよく。

 気が強い性格だった。


「わかったってば」


 私はポニーテールを揺らし、若い男性たちの間をすり抜けるようにビールを渡していく妹の後を追った。


「お、綺麗なスタイルだね。見たところ高校生か大学生だね。水泳でもやってたの?」


 小麦色の肌の若い男性はサングラスを少しずらして、私を見つめていた。

 白い歯が見えるほど、微笑んでいるが、上半身裸の水着姿にサンダルを引っかけているので、ナンパをしに海に来たような人だ。

 隣の男性は一際大きく妹とおしゃべりをしていた。


「ええ、そうです。水泳部のトップだったの」


 私は自分がナンパされていても、あまり気にせずに話に乗った。

 彼氏を失ってからは、どうしてか男性に警戒心がまったくなくなってしまったていた。


「ビール。一緒に飲む?」


「仕事が終わったら……。夕方には終わるわ」

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