第七話

屋上にて、


「あっ楓!こっちこっち〜!」


「なんで急に呼び出したりなんかしたんだ?」


本当に謎だ。しかも何故屋上なんかに?


「えっとね、良いやちょっと待ってて!」


そう言って柊はパタパタと奥へと去っていった。


「……?」


「翠!早く来てってば!」


「へいへい、急かすなよ。」


すい……?誰かの名前か?




「楓おまたせ〜。」


そう色々と俺が考えを巡らせていると、柊が現れた。後ろにもう一人いるけど。


「で?結局なんだったんだよ……」


「どうも〜雪璃の友人こと水無瀬 翠でーす。」


と目の前の女子が若干怠そうに自己紹介する。柊より五センチ程度高く、スタイルもいい。髪は二つにまとめられており、パーカーを羽織っている。ぶっちゃけかなりの美少女だ。柊と並ぶと絵になる。




「って翠が先に言っちゃったけど、こいつは水無瀬  翠。僕の友達だよ。」


もしかしてこいつが……この間言っていた……!


「もしかしたらこいつが……あの子?」


「そうだよー。翠のことだよー。」


「お前らこいつこいつって失礼じゃね?」


サラッと水無瀬がツッコむ。


「やっぱり女子だったのか……。」


と俺が呟くと、目の前の二人がぽかんとした表情で立っていた。


「え?俺何か間違ってる?」


別に間違ったことは言ってないと思うのだが……




「あはは!ごめん楓!言い方が悪かったね!」


「お前もうちょっとオレのこと説明しとけよな(笑)」


えっ?えっ?訳が分からない。ていうか今オレって言ったか?俺が戸惑いを隠せないでいると。


「えっとね?楓?」


「お……おう?」




「翠はね、男の子だよ。」


「は?」


男の子?男の娘?おとこのこ……オトコノコ……。


「どえええええええええええええええええ!?」


「ちょっ楓うるさい!」


お前のせいだわボケ!


「ごめんね~(笑)オレが可愛すぎるばっかりに。まぁついてるかついてないかで言ったらついてますよ。ハイ。」


「嘘だろ……。」


男だったのか……じゃあなんでこんな格好を?それはともかく、俺の期待を返せや!あんな紛らわしい言い方しやがって、柊許すまじ。


でもよく見たらズボン履いてるわ。




「ねぇオレにキュンときちゃった?惚れちゃった?」


「んなわけあるか!」


「ということで仲良くしてやってよ。」


別に俺は柊とも仲良くやってるつもりはないんだが。


柊が付きまとうだけで……


「よろしくな楓くん♡」


うわぁ……こいつはヤヴァい奴だぁ。


「今こいつヤバい奴だとか思ってんだろ。」


お前ら二人ともエスパーかよ。鋭すぎる。


「なんでわかったの?」


「いやもう顔に出まくってるじゃん。」


「た、確かに。」


そこ二人勝手にヒソヒソするんじゃない。聞こえるけども。




「なぁいいだろ〜。仲良くしてくれよ〜。」


「断っていいか?」


「駄目だな。」


強引すぎるっ!とにかく駄目らしい。




「じゃあもっとお互いのことを知ろうということでこのままカラオケにでも行っちゃう?」


と柊が提案する。唐突すぎるし、何より無理矢理まとめた感が歪めない。


「おー!」


お前ものるなよ、てか断りにくいじゃねぇかよ。


クソ、一人でゆっくりと帰ろうと思ってたのに。


「ほら行くよ〜!翠っ!楓っ!」


「はいよー。行こうぜ楓。」


こいつはこいつでいつの間にか呼び捨てになってるし。馴れ馴れしい奴らだな。


「早くぅ〜!」


俺は無理矢理二人に手を引かれ、屋上を後にした。


今後更に俺のまわりが騒がしくなったのは言うまでもない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る