第五話

「なぁ、あの子って誰なんだ?」


これは聞いてよかったのかとも思ったがふと気になって聞いてしまった。


「どんな子……か。」


と少しだけ柊が考え込む。


「そうだなぁ、うまく言い表せないけど騒がしくて、ちょっと強引で。いつも笑顔で楽しそうで自由な子かな。」


あの子のことを語りながら柊が思い出すように笑う。


「うわ……絶対に関わりたくない。」


面倒くさいのがまた増えるってことだよな多分。


「もー楓はまたそんなこと言って。」


またって……そんなに言ってないと思うのだが。




「あっそうだ。」


柊が切り出す。また何かを思い出したかのように。


「その子めっちゃくちゃ可愛い。」


「その話詳しく。」


柊がそういった瞬間一気に詰め寄る。


別に俺だって健全な男子高校生。女子に興味が無いわけではないのだ。


というかいつも女子に囲まれているこいつが言うならそうなんだろうし、相当な美少女なんだろう。


可愛いってことは女子だよな……多分。




「なに狙ってんの?」


と柊が若干引いた目で見ながら、俺に聞く。


そういうわけじゃないけど。


「そういうお前はどうなんだよ。付き合ってたりすんの?」


「そんな、付き合ってるわけ無いじゃん!ただの友達だよ。」


その割には動揺しているように見えましたけど。


「ふうん。」


まぁ俺にはどうでもいいことだけど。


「大体僕の好きな女の子なんていないし。興味すらない。」


あんなに女子に囲まれといてそれを言う?


「でも学校にファンクラブ……?ってのがあるじゃん。」


そう実は柊にはファンクラブというものがあるらしい。ほぼほぼ女子だけど。


「それは皆遊びでやっているだけだよ。あんなの本気じゃ無いでしょ。」




本気じゃない……ね。あれで?学校にいる時間のすべてを柊のために捧げ、柊に女子が近付こうもんなら、二度と近づけないというあれが?遊び?


というかファンクラブではなく、ストーカー軍団では?




そんなことを話しているうちに、気付けばもう自分のの家まで三分もかからない所にいた。


「じゃあね楓。また明日!」


柊が眩しい笑顔を向けながら言った。あー本当に眩しい。


「……ん。」


明日も付きまとうつもりなのかよ。そう心のなかでツッコミを入れながらも別れた。


そんなことを考えているうちに家についていたらしい。そして俺は玄関のドアをゆっくりとあけた。


「ただいま。」


「おかえり〜。」


と母の声が聞こえてきた。


そしてその後、二階の自分の部屋向かう。


そして、ベッドに思い切り飛び込んだ。


今日は色んな事があったな。いやもうありすぎて頭がついて行けない。


「今日一日濃かったなぁ。」


そうつぶやいた後、すぐに俺はふと何かを思い出してベッドの上から降りた。


そして俺はカレンダーに赤いペンでそっと予定を書き入れたのだった。

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