第11話 天野さんと僕と魔法適正


僕は天野さんと街に向かって草原を歩いていた。


もちろんここは異世界な訳で魔物もわんさかいるのだが、何故か近くに寄ってすら来ない。


さらに、こちらから近づいていっても『ギギッ』と声をあげて逃げていく始末。


せっかくゴブリンらしき緑の色をした魔物とかスライムらしき魔物を見つけたというのに…


「天野さん、さっきから魔物みたいな生き物が寄ってこないんですけど… せっかく異世界らしい要素を見つけたのに…」


「あら? 今の松下くんは一般人よりはステータスがあるとはいえ、武器になるものの1つすら持っていないから危険は出来るだけ避けれるよう魔除けの魔法を使ってたのよ。あんなちんけな奴等はいつでも見られるから、自分の身を守れるようになってから見に行きなさい」


「あっ! そうだ、ステータス! 異世界に来たから変わってるはず! 天野さん、お願いします」


「わかったわよ。教えてあげるから試してみなさいよ」


─status open─


そう天野さんが言うと見覚えのある半透明の板が出てきた。


前回は何を言ってるのかわからなかったのに今ならわかるのは異世界にいるからだならだろうか?



名前 マツシタ ハルト

性別 男

年齢 17歳

Lv. 1

HP 137

MP 7,753,000

Str 186

Def 124

Agi 289

Int 613

Sta 327

Tec 261



相変わらずMPは高いが全体的にステータスは地球にいた時より低めになっている。


基準値が100ということを考えると、レベル1時点でも十分に高いと言えるだろう。


ここからまだ伸び代があると言うのだから凄い。


「え!? 松下くんのステータスってこんな高いの!?」


天野さんですら驚いてるじゃん…


「そうみたいですね…」


「これなら攻撃魔法メインで教えた方が良さそうね」


「それってMPとIntが高いからですよね?」


「そうよ。ドラ○エとかでも馴染みあるでしょ? このステータス的に鍛えれば魔法使いの弱点である近距離戦闘も、本職の剣士とかほどではないけど出来るようになるわよ」


「それって強くないですか?」


「そりゃ、強いわよ。さっそく魔法適正を確認するからこの石に手をのせて」


天野さんはそういって水晶のようにきれいな石を取り出した。


僕がそれに手をのせると、石からホログラムのようなものが投影された。


火属性 ○

水属性 ◎

風属性 ◎

土属性 ○

無属性 ◎


それを見て天野さんは


「全適正持ちで、水風無属性がさらに高い適正があるなんて… 信じられない…」


と唖然としていた。


「天野さん、適正があるのはわかったんだけど、それぞれの属性の特徴を教えて欲しいのだけれども…」


僕の質問を聞いた天野さんは、はっとしたように向き直って答えてくれた。


「そうね。説明をしないとね。まず、火属性は熱を操る魔法よ。だから周りの熱を上げてあらゆるものを発火させたり、逆に周りの熱を下げて氷漬けにすることも出来たりするのよ。火属性というより熱属性といったほうが正しいような感じはするけど、ヴァルナヘルムの人達がそう読んでるから火属性と呼ばれているのよ」


「次に水属性ね。これは私が担当の魔法属性なんだけど、まぁ水を自在に操る魔法よ。高度なものになると空気中の水ですら弄れるようになるわ。対象の顔周りに空気中の水を集めて窒息させることも出来たりするわ」


「次は風属性。これは空気の流れを変える魔法よ。空気の流れを変えれるから自在に竜巻を作ったり、上昇気流を作ったり出来るわ。それに目に見えないから、この世界では暗殺なんかに良く使われてるみたい。最も警戒するべき魔法属性よ。」


「土属性は簡単ね。地形を変える魔法よ。高度なものは意図して地震を起こしたりも出来るわ。まぁ他の属性もそうだけど、このレベルの魔法はまだ使えるような人間すらいないんだけどね。」


「最後は無属性。これが一番説明しづらいのよ。転移魔法とか、収納魔法とか、結界魔法とかの便利系の魔法って言ったらまだわかりやすいかな? 攻撃力の高い魔法はほとんどないに等しいわ。」


「へ、へぇ~」


天野さんの怒涛の説明に僕はそう答えることしか出来なかった。


「さぁ、攻撃魔法も理解出来たみたいだし、そろそろ魔法の練習に入るわね。では、基本は──」


「そ、そういえば水属性は天野さんの担当って言ってたけど、他の属性にも担当の使徒様っていたりするんですよね?」


「えぇ、いるわよ。火属性は、戦いの使徒ヴァルド。水属性は、私、つまり調和の使徒レイア。風属性は、愛の使徒フラウ。土属性は、豊穣の使徒ケイシー。無属性は、守護の使徒ノエラが、それぞれで担当になっているわ。それがどうかしたの?」


「いや、単純に気になったもので…」


「そう。それじゃあ、さっきの続きを話すわね。魔法の基本は──」


どうやら僕はヴァルナヘルムでも勉強会をするようです…


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