番外編 何もかも失った哀れな鬼①
…………………………………………
番外編 何もかも失った哀れな鬼①
…………………………………………
……ここはシラトス王国にある監獄
『ヘルバトス』。
この監獄では世界中からあつめられた凶悪犯罪者を投獄している。一度入れば自力で外には出る事が出来ない。
刑期が終わるまで、煉獄の苦しみを味わい続ける地獄を具現化した様な場所である。
その最下層に先月ある男が投獄された。
名は『雛美火・紅』
牡丹王国 「元」第1王子だ。
今回の彼は多くの命を奪い、
牡丹城を半壊、町を火の海にした。
武虎と出会う前の彼だったら、
上記の問題を起こしたとしても
何とも思わなかっただろう。
だけど…
雛美火「………違う…俺は…傷付けるつもりは……なんで…俺は人間の為に…」
現に人を好きになった彼は、
自身が犯した罪に押しつぶされそうに
なっていた。
項垂れ、ぶつぶつと後悔の言葉を
呟いていた時、
カツ
カツ
カツ
ゆっくりとこちらへ近寄る足音がした。
足音がする方へ目をやると…
雛美火「……父上……」
焔火「……………」
焔火が鉄格子の前に立っており、
悲しげな瞳で雛美火を見た。
…………………………………………………
…………………………………………
………………………………
※ここから雛美火と焔火の会話となります。
焔火「…雛美火…今日はお主に刑を伝えにきた。」
雛美火「……刑…今まで…多くの命を
奪ったから、聞くまでもない…
…どうせ俺は死刑でしょう」
焔火「……………」
雛美火「死刑か…真澄さんや武虎に会えるなら、喜んで……」
焔火「…死刑じゃないぞ…」
雛美火「……は?」
焔火「お主の刑は王子の権限を剥奪した上で600年間この地下牢で罰を受ける事になった
もう…2度と彼女達に会えない。
残念だったな死刑じゃなくて…」
雛美火「………っ…どうして…どうして俺を
死刑にしなかったんです。父上……」
焔火「……」
雛美火「死刑になればっ……俺は…」
焔火「死刑を利用するな!
逃げるな!雛美火!!!」
雛美火「………………」ビクッ
焔火「……生きて罪を償え。
今までの過ちを反省してくれ
…儂からのお主への【最後の思い】じゃ」
雛美火「生きて罪を償う…
えっ…最後…の思い…?」
焔火「あぁ、もう儂と顔合わせするのは、
これで最後じゃろう。この牢獄は刑期の間は人との面会は禁止だからな。それに…儂…残りの寿命が100年なんじゃよ。」
雛美火「…なっ…100年ですって
嘘だ…鬼だったら
2,000年ぐらいは生きられるんじゃ…」
焔火「…お主が殺した者達をできるだけ多く…儂の寿命と引き換えに生き返らせた。」
雛美火「!!…そんな…父上…
…すまない……」
焔火「……謝る相手は儂ではない…
殺された者達にだ。きっとトラウマになっているはずじゃ…これから罪を償って欲しい分かったな雛美火」
雛美火「…………はい………」
焔火「それともう一つ…牡丹王国についてだが….儂の代で終わりにする。儂が死んだら、翠狐に後を引き継がせる事が決まった。」
雛美火「……!!…鬼一族が…
何百年もかけて築きあげた国が終わる…
……何で…どうして…こうなったんだ…
何がいけなかったんだ…」
焔火「…雛美火…
…たしかにお主は…国の為に
動いていた…と思う……」
雛美火「…………じゃあっ…
何が良くなかったんだ…」
焔火「…愛した人間を2人も殺してもなお気付かないのか…この子は本当にあの優しい兄さんの子なのか…?」
雛美火「……父上?……今のは……」
焔火「…いや…何でもない。
ごほんっ『何が良くなかった』か…
それは…お主には足りない物があったから、上手くいかなかったんじゃ」
雛美火「俺に足りない物……一体それは…」
焔火「……ああ…お主は今まで民の声を聞かずに行動していた。あまつさえ、力を己の欲だけの為に使い続けていた。
『他人の気持ちを聞き入れる事』
『力を民の為に使う事』
それがお主が足りない物じゃ」
……………………………………………………
そう言って、焔火はため息をついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます