第7話 オキニスside④オーロラへの回答


……………………………………………………


………………………………



気絶したピンキーさんを

ダージリンさんと一緒に

彼女の自室へ運んだ後…


ダージリン「シルク魔王、シリンヌ王子、

手紙を書かれた後、一度シラトス王国に

お戻りになられたらどうでしょうか」


ダージリンさんは、にっこり笑顔で、

青筋立てながら王族2人に対して、

そう言い放った。



家族が危険な目に晒されているのに

怒るのを必死に我慢している。


シルク魔王がいるからだろうか…


もう怒って良いんですよ

ダージリンさん。


貴方は優しすぎる。


俺だったら、確実にブチ切れ案件。

絶対に相手を殴るだろう。

怒らないのが不思議なくらいだ。




シリンヌ「何故だ!…身重のピンキーを

置いて行ける訳ないだろ!!俺がいない間、

何かあったら…」


シルク「僕も同感だ。それにピンキーさんは魔力が殆どないから、人間と近い体質なんだろ。それだったら尚更…側にいた方が…」


「………?!」


いやいやいや…2人とも 

…全然分かってない!


もうすでに事が起きているじゃないか!!

しかも貴方達が原因で!


ピンキーさんが心配なのは

とても分かる……が、

目の前の事だけ見て、周りが見ていない。


これは…一国の王子である俺が、

ちゃんと2人に言わないと…

大惨事が起きる前に…



「あのっ…シリンヌさっ…」


ダージリン「オキニス様、大丈夫だ

俺様が言う。」


言う前にダージリンさんから、

すっと片手で制された。


ダージリン「俺様は大丈夫、大丈夫…」


自身を落ち着かせる為、

すー…と息を吸って吐いてから、

シリンヌさんとシルク魔王を

真っ直ぐに見た。



ダージリン「シリンヌ王子、魔王様、

姉貴がとても心配で側に居たいのは、

とても分かります。…お腹にいる子も

お2人にとっては初孫で、第一子ですから

……ただ…」


2人には言いにくそうに…

さっと目を逸らした。


シリンヌ「……何か…良くない事でも、

あるのか?」


恐る恐る聞くシリンヌさんに、

やがて、ダージリンさんは、

苦い顔して、こう言った。



ダージリン「…姉貴が貴方達の魔力に

耐え切れるかどうか…

現に魔王様が泣いただけで気絶しました。」


シルク「そんな…気絶したのは僕が原因で…


…そうだ…思い出した…」



シルク魔王はハッと何かに気が付き、



シルク「…オーロラの時もそうだった…

どうして大切な事を忘れていたのだろう…


シリンヌ!ダージリン君の言う通り、

明日の朝、一旦帰るぞ!

シラトス王国に」



さっきまでの考えを一変させ…

これは…一体どう言う事だ?



シリンヌ「なっ…父上まで!!

どうして…帰るだなんて…」


シルク「ダージリン君が…言いたいのは…

魔力が強い僕達が側に居続けると

母子に危険が及ぶと言う事だ。

最悪、死ぬ可能性もある。」


シリンヌ「………ピンキーと子供に危険が…

俺達のせいで死ぬ可能性が…」



シルク「……ああ、オーロラが妊娠していた時な、僕の魔力で危険が及ばない様、隔離されていた事を思い出したよ。


シリンヌ…これはピンキーさんと子供を

守る為だ…それに……」


はぁ…とため息を吐き、

シルク魔王は嫌そうな顔をして、

続けざまにこう言った。



シルク「……ここ最近、シラトス王国に戻っていない…仕事もきっと溜まっているし…

なにより…ジンジャーに怒られる…」


シリンヌ「!!」


シルク「僕だって嫌だけど…

こればかりは仕方がない。

一度、シラトス王国に帰ろう。」


シリンヌ「~~~っ……わかったよ…

……父上……」


シルク魔王の説得にシリンヌさんは、

しぶしぶ了承して…

項垂れ、頭を下げた。


よっぽど、ピンキーさんと離れるのが

嫌なんだろう。


……これは…

なんとか話がまとまったのか?





ダージリン「やっと解放される(小声)」


隣にいるダージリンさんは、

顔色がパッと明るくなって、

小さくガッツポーズをしていた。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る